どこかの評論家が「これは医師の志が低いからだ」と言っていたが、それこそ大きな間違いである。医師は辛い仕事も、安い給料でよく働き、患者のためにすべてを捧げることこそ、本来の姿である、そんなイメージを明治以降ずっと作り続けてきた。その影には、医局制度の頂点に立つ主任教授の権力や権限が大きく影響していたに過ぎなかったのだ。
主任教授の権限が制限された今は、医師の適正な配置をだれかが、コントロールしなければならない。そいう意味では、政府の方針は正しいだろう。さらに広げれば、開業医の数なども地域によっては非常に偏っているので、それも規制をかけるべきだろう。
しかし、医師というのは自由がある職業と思われてきた。それが職業としての魅力でもあったはずだ。実際には法的に与えられている権利ではないが、処方、入院、治療、検査などほとんどのことを医師が決定しなければ、医療は行うことができない。
だからこそ医師会などは、医師以外の医療従事者が、何か決定権を持つことを非常に嫌がるのだ。主任教授の権限の制限の次は、医師自体の権限の制限、あるいは仕事を分けることも必要な時期ではないだろうか。
PTやOTが開業できれば、在宅でのリハビリなども非常にやりやすくなるだろうし、看護師が開業できれば、看護師はより魅力的な職業になるだろう。薬剤師がジェネリックへの切り替えの権限を持てば、医療費増大の抑止にもなる。
医師がすべての決定権を持っていることは、むしろその弊害のほうが大きくなっている。医療の分業化は、医師会の強烈な反対が起きそうであるが、世界の医療の流れは、分業になっている。医療はだれが得すればいいのか、原点に戻って考えてみるべきだ。