医師不足解消へ、診療科に定員制、適正配置求め財制審提言、報酬配分も見直し。
財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は医師不足の解消に向けた改革案を提言する。医師になる際に選ぶ診療科(内科や外科など)の規制や、看護師の医療行為を広げることなどが柱。医療機関向けの診療報酬が年末に改定されるのを前に、医療サービスを効率的に提供する体制づくりを優先させ、引き上げ論をけん制する狙いもある。
6月にとりまとめる建議(意見書)に盛り、2010年度予算編成の指針となる「骨太方針09」に反映させたい考えだ。
財制審が最優先課題に取り上げるのは、医師が足りない診療科や地域に適正に配置する仕組み。政府は昨年以降、大学医学部の定員数を約860人増やしたが、最近は精神科や整形外科に人気が集まる一方で、激務の産科や外科は敬遠されがち。このため国家試験の段階で定員制を導入するなどの検討を求める。
開業医と病院勤務医の報酬格差の見直しも提案する。報酬を一律に増やすのではなく、不足しがちな診療科に手厚くするなど柔軟な配分ができるよう、中央社会保険医療協議会(中医協)などに改革を迫る。
自治体病院が休止や閉鎖に追い込まれる事態を減らすため、地域の病院機能集約も求める。地域の拠点病院に多くの医師を置き、必要に応じ周辺の病院や診療所に医師を派遣する仕組みなどが一例だ。看護師や薬剤師などの役割分担の見直しも課題に挙げる。
診療報酬体系の見直しや規制導入は建議を受けた政府が真剣に取り組むかどうかにかかっているが、日本医師会などが反発する可能性もある。(日本経済新聞 2009/05/26付朝刊より)
医師の適正配置をコントロールする仕組みが必要だと分かったのは、新臨床研修医制度の影響ともいえるだろう。医師が自由に診療科目、就職先を選択すれば、当たり前のことであるが、仕事のきつい診療科目は敬遠される。新臨床研修医制度によって、各地で医師不足が起きて、医療に市場性を持ち込むと、非常に医療が偏ってしまうということが明確になった。
いままではそれを主任教授という存在が抑え込んでいた。しかし、主任教授の権限を制限したことから、医師、それも若手の研修医の流動性が生まれた。医療は他の産業と違い、あまり自由にしてしまうと、より肉体的にも精神的にも負担の少ない職場に偏ってしまうのだ。