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日本医師会が「第3回 喫煙意識調査」の結果を発表。
~医師全員の禁煙はもちろん、国民全体の禁煙推進を

2009/03/07
医師・作家 米山公啓

「禁煙」の本当の意味は、
個人の生活の質(QOL)を上げることにある

 日本での禁煙が進まないのは、もちろん国がなかなか禁煙運動を本気でやらない(やれない?)事情があるからなのだろうが、先進国でレストランのような閉鎖空間で喫煙できるのは日本だけといってもいい。イタリア、フランスですらレストランでは禁煙である。イギリスではパブですら禁煙にしてしまった。日本ではなぜか、路上での歩きたばこを禁止にするのが精一杯というところだ。

 空港など喫煙ルームで、モクモクと立ち上る煙の中で喫煙している姿を見ると、人間の不思議さを感じてしまう。できればあの喫煙ルームに、喫煙による健康被害のポスターを貼るべきではないだろうか。

 医者という立場からすれば、いかに禁煙させるかを努力することが、当然のことである。禁煙指導が進まないのは、開業医が禁煙指導すると時間的に無駄が多くなり、営業的には非常に不利になるからということもある。

 誤解を恐れずに言うなら喫煙はセックスと同じである。つまり他人に見せるものではない。タバコを吸っているところを他人に見せると、せっかく禁煙をしている人が、また吸いたくなってしまう。吸っているのが医者であれば、なんとも皮肉な話である。どうしてもやめられないというのであれば、副流煙の問題も考慮して、完全個室でだれもいないところで吸うしかない。

 医療費削減という視点なら、禁煙はしないほうがいい。喫煙によって寿命が短くなるのは間違いないので、そのまま放っておく方が医療費は少なくなる。禁煙すると医療費が減るからいいという議論は間違いである。もちろん一時的に医者へ行かなくなるから医療費は軽減されるが、長生きすることで、別な病気になるので、長期的には医療費軽減にはならない。つまり禁煙は何も社会のためにするわけではない。あくまでも個人の生活の質を上げることに意味があるのだ。

 医者の喫煙率がゼロにならないのは、それだけ医者の生活の質の悪さを象徴しているのかもしれない。忙しいこと、リスクの高い仕事であること、なかなか評価されずストレスがたまることなどが、喫煙の理由なのかもしれない。ゆったりと時間を十分に使って、診療ができれば医者の喫煙率はもっと下がるに違いない。

 喫煙する医者にある種の同情も覚えるが、しかし、喫煙によって起こる様々な病気を考えると、やはり医療に関わるものとして、自らを律しなくては、他人の健康など考えることはできないのではないだろうか。

 私は医学部入学時に禁煙宣言をさせる、あるいは喫煙者は入学できないくらいの厳しい基準が必要のように思う。また医師国家試験の合格条件に禁煙を入れるべきではないだろうか。

 医学は病気のリスクをいかに減らすかで、進んできた。喫煙が様々な病気の大きなリスクであることは間違いない事実となったいま、医療行為の前にまず禁煙を行うべきだろう。それほど厳しい姿勢で臨むべきであり、国、医師会、学会も本気で禁煙に取り組んではどうだろうか。

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