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Dr.田中が教える国試のツボ【眼科編(その1)】
第12回 眼科にはキーワードだけでも得点できる問題がある

2010/06/02
Dr.田中

Dr.田中康一郎
東邦大学医学部卒。同大学院医学研究科(眼科学)で学位を取得。国家公務員共済連合会登戸病院眼科医長を経て、現在鹿嶋眼科クリニックに勤務。眼科専門医。平成23年春、東京都大田区で開業予定。

最近の医師国家試験の眼科には、良問が出題されるようになりました。かつては、眼科医が一生の間に1度も出会わないような疾患を問うような問題や、重箱の隅をつつくような問題が出題されていました。実際に受験するまでどんな問題が出るか読めなかったため、単純な暗記で対応するしかありませんでした。しかし、最近は実際の臨床に即した、臨床現場でよく出会う症例をたくさん出題するようになっています。

また最近の国試の傾向は、考えさせる問題が増えていることです。医療は、まず情報を記憶するという作業をして、実際にその知識を臨床で応用することになります。かつては、記憶だけで解答できる問題がほとんどでしたが、最近はその記憶を使って解く応用力が問われる問題が出題されるようになったのです。複数の診療科にまたがった問題が出題されることも少なくありません。例えば、糖尿病と眼科、脳外科と眼科をセットにした問題です。応用としていろいろな情報を組み合わせた出題が増えているのです。かつての国試は「記憶」勝負、最近の国試は「生きた情報」を持っていないとダメという傾向です。

記憶問題から応用問題の移行期として、新傾向の問題が増えています。例えば、かつては一般の眼科医はドライアイをたいした病気とはみなしませんでした。ドライアイには水分を補給する程度でしたが、最近は治療対象の病気になりました。ドライアイがホットな話題になっているのです。そのため、国試でも眼精疲労とドライアイの関係が出題されるようになりました。

しかし、学会で話題になったテーマがすぐに出題されるのではなく、国試に出題されるまでには5年から10年のタイムラグがあります。5年間ほど臨床で使ったテーマで医師同士のコンセンサスが形成されてから出題されるためです。最新医療のちょっと前のテーマが新問として出題されるのです。例えば、加齢黄斑変性に対する光線力学的療法(PDT)が普及し始めて5年ほどになるので、そろそろ出題されるのではないかと考えています。こうした新しい治療法が国試に出題されるのは日本国中で使われるようになってからです。しかし、医学生向け眼科学教科書は数年ごとにしか改訂されないので、こうした新しい治療法はまだ掲載されていないことがあるので注意が必要です。

ここ10年ほどで医師国家試験も変わりましたが、大学の卒業試験も変わりました。かつては、100年に1度いるかどうかという極めて珍しい病気さえ、自分の専門だからと卒業試験に出題する教授がいました。しかし、最近では学内の卒業試験審査機関がOKを出さなければ、何度でも問題を作り直させるようになっています。こうして、問題を作成する先生方の水準が上がってきたのではないでしょうか。「そんな問題は医学的には価値があっても国家試験的には価値がない」とはっきり言われるようになったのです。

また、国試にはグレーゾーンを出題しないようになっています。どちらとも取れるような問題は出題されないのです。臨床の医師としては、70%ほど合致していれば診断・治療を行うこともままありますが、国試ではそうした問題は出題されません。これはとても良いことだと思います。私たちがメックの模擬試験を作成する際にも、このグレーゾーンに関しては厳しくチェックされます。かつては「だいたいこうだろう」という問題を作成することができましたが、今は「完全にこれだ」と確信できる問題しか作れません。

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