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Dr.三浦が教える国試のツボ【救命救急編】
第11回 国試は医師として必要な知識を問われる

2010/05/19
Dr.三浦

Dr.三浦邦久
北里大学医学部卒業。順天堂大学医学部麻酔科学・ペインクリニック講座助手を経て、順江会江東病院麻酔科部長から院長補佐へ。順天堂大学医学部麻酔科学・ペインクリニック講座客員准教授。順天堂大学医学部附属浦安病院に勤務していた際にはドクターヘリに搭乗し、富士スピードウェイで開催された日本GTやF1を医療チームとして支えた。また、東京マラソンなどのスポーツイベントにも救急医として参加。日本救急医学会専門医など資格多数。

私は国家試験予備校メックが実施している模擬試験の麻酔・救急分野の問題を作成しています。研修医時代から問題を作成しているので17~18年になります。国試には救急分野からは、硫化水素などの化学薬品を使った自殺などの中毒、一酸化炭素中毒、急性アルコール中毒、心肺蘇生などが出題されます。

実は、私は日本消化器病学会の専門医試験を受験するときには、基本的な知識を得るために、国試の過去問から消化器と肝臓の多肢選択問題をもう一度勉強しました。解剖・生理・薬理といったベーシックな知識は専門医の試験と国試が同じだからです。国試の勉強は、特に内科を志す学生さんにとっては重要です。国試の勉強を医師になってからまたやることになるとは思いませんでしたが、病態生理を理解するには、国試の勉強が役に立ったのです。一方、学会の専門医試験で出題された新傾向の問題が、数年後には国試で出題される可能性もあります。

かつて国試に「気管挿管した後に、確認するものは何か」という問題が出題されました。「呼気終末二酸化炭素濃度(End-Tidal CO2)」がその答えです。現在の二次救命処置(ACLS:Advanced Cardiovascular Life Support)は、AHA(アメリカ心臓協会)が策定した「ガイドライン2000」に基づいています。気管挿管は、二次救命処置の中でも重要な処置の1つです。

気管挿管の際の確認事項は、胸がしっかり上がっていること、呼吸音を聞くこと、つまり見て聞いて感じることです。ところが、体格の良い人で胸郭の挙上がわかりにくい場合は、誤って食道に挿管されていても気づかないことがあります。特に、自発呼吸がある場合にはわかりにくいので気を付ける必要があります。また、小さな病院から大きな病院への搬送の途中で、チューブがずれてしまうことがあります。そこで、呼気終末二酸化炭素濃度を確認することが大切なのです。

心停止への処置は、かつては心臓マッサージと呼ばれましたが、最近は「胸骨圧迫」と呼んでいます。「ガイドライン2000」から「ガイドライン2005」になって、この胸骨圧迫と人工呼吸の比率が15:2から30:2へと変わりました。今年はガイドラインの改訂があり、変更箇所が今後、国試に出題される可能性があります。医師国家試験の問題は、厚生労働省が「今はこれが重要だ」というメッセージを示している問題であり、国家の戦略の指標なので「ガイドライン2010」で新しく増えた項目が出題される可能性があるのです。「ガイドライン2010」に盛り込まれたのは、必要だから増えているわけですから国試に出題されてもおかしくないと言えます。

日本では高円宮憲仁親王が心室細動によって急逝したことによって、AEDが普及することになりました。AEDに関してはまだ国試に出題されたことはありませんが、「除細動の適応があるのはどういうものか」という問題は出題されたことがあります。心室細動や無脈性心室頻拍への対処は、医薬品ではなく除細動が重要だからです。AEDは心室細動に電気的ショックを与えることでリセットして心肺を再開させるためのものですが、その間にも胸骨圧迫をすることが重要です。

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