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第10回 分娩の“機序”を理解することがカギ

2010/03/29
Dr.松喜

また、教科書や参考書に掲載されているのは、陰影をつけた立体的で写実的な骨盤や胎児の絵になっています。世の中に出回っているものは、骨盤の外側の情報や胎児の身体まで描かれている図がほとんどです。いわば、メロンの「形状」の説明をするために、メロンの周りの編み目を描いたあげくに、包装紙や外箱も描いているようなものなのです。これでは重要な点に目が行かず、理解を妨げられるのは当然です。実際には、産道の筒の形と胎児の頭の形だけがわかれば良いのです。そこで私の講義では、重要な線だけをデフォルメして取り出したシンプルなイラストを用意しています。

また、国試の勉強において、個々には理解できない問題もつなげてみると全体像が把握できるようになる場合があります。常にそれを意識して講義をしていますので、私の講義を受けた学生さんたちに、「そういうことですか!」と目から鱗の表情をしてもらえることがあります。産婦人科の勉強であっても、婦人科臓器という枠を超え、生物の営みというか、自然の理としての根源的な事象の1つを理解することで多くの問題が一気に解けるようになることもあるのです。

暗記能力が非常に高い人はひたすら暗記をすれば国試に対応できるかもしれません。しかし、最近の国試は記憶しなければならない量が膨大なので、ほとんどの人には単純な暗記で対応するのは不可能です。たとえば有名な国試対策本『イヤーノート』は、厚さが初版の3倍になったと言われています。

そう考えると、大学の講義で学生さんの理解を促す工夫が少ないのは、別に手抜きをしているわけではなく、暗記で対応できた世代の方たちが教壇に立つことで「国試対策は暗記で十分だろう」と思って学生さんたちに教えている可能性もあるかと思います。ちょうど私が国試を受験したころが移行期で、それ以降は暗記だけでは対応が難しくなってきました。現在では、機序を理解したり、病院実習の時期にいろいろと学ばなければならないように変化しているのです。

読影力を問われる画像の出題が増えている


臨床でCTやMRIなどの画像診断機器を使用する機会が増えてきたので、画像診断の出題も自ずと増えています。特にMRIの出題数増加が顕著です。これはここ20年ほどでMRIが急速に発達して鮮明な画像を撮れるようになったためと考えられます。私が大学に入学したころには、MRIの撮影には非常に時間がかかったので、頭部のように動かない部分しか撮影できませんでした。しかしその数年後には高速撮像法によって体幹部のように呼吸で動く部分もMRI画像が撮れるようになりました。今では超高速撮像法により心臓の評価までできるようになってきたほどです。

ところで、産婦人科では、CTと比べて超音波やMRIの重要性が高いです。一つには、CTは被曝をするので妊娠中の患者さんには使えないために、超音波やMRIが好んで用いられるということが挙げられます。また骨盤の中、特に子宮は造影剤を用いない限りCTではコントラストがつき難いのに対し、MRIでは造影剤を用いなくてもコントラストがつくのも理由の一つです。超音波についてはアーチファクトを上手に取り除く技術が開発され、非常にきめ細かい画像が得られるようになりました。これらMRIや超音波の進歩で格段に産婦人科領域の診断能が高まったのです。そしてこれらが臨床でも多用されるようになったため、骨盤MRIや経腟超音波などの画像診断の出題数が増えています。

しかも、かつては問題文を読めば解けるような問題がほとんどでしたが、最近では問題文だけでは確定診断に至れず、画像でしか診断がつけられない問題が増えています。そういう問題が2-3問なら他の勉強で正答率を上げて補えばよいのですが、最近は画像問題の大半が「画像が読めなくては診断できない問題」となっており、合否に直接影響するようになりました。

といっても画像が重要な疾患は限られています。MRI画像としては、子宮筋腫・子宮腺筋症・チョコレート嚢腫・類皮嚢胞腫が繰り返し出題されています。また超音波画像では、頚管無力症と前置胎盤、双胎妊娠、多嚢胞性卵巣症候群が重要です。これらは必ずチェックをしておいて欲しいと思います。

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