日経メディカルのロゴ画像

第10回 分娩の“機序”を理解することがカギ

2010/03/29
Dr.松喜

Dr.松喜
慶應義塾大学医学部卒。医師国家試験予備校メックでは、医学生の多くが苦手にしがちな産婦人科を中心に「産婦人科対策講座」や「画像診断講座」などの講義を担当。全国の大学からも生講義依頼が多数寄せられている。“面白く、分かりやすく”をモットーに、イラストや模型を使って学生の記憶に残る講義を展開している。

国試における産婦人科の出題数は毎年約50問といったところです。約3分の2が産科、約3分の1が婦人科からの出題になっています。約50問なので出題率は1割程度です。ならば、勉強の力の入れ方としては1割程度で良いかというと、残念ながらそうではありません。特に産科は馴染みのない科目なので、出題率よりも多くの時間をかける必要があると感じる学生さんが多いようです。

産科にしろ婦人科にしろ、国家試験は一般的に過去問を解けるようになることが合格への第一歩であることは変わりません。ただし、産科は分娩機転が絡んだ問題が出題されやすいため、その場で考えさせる問題が多いのが特徴の一つです。つまり応用問題が多いので、“産科は苦手”と思う学生さんが多いのです。また国試の出題は、時代が変われば傾向も変わります。実際、産婦人科学会等で話題になった疾患が、3~4年以上経って国家試験に出題される傾向があります。なぜタイムラグがあるのかと言いますと、学会で話題になっている内容が3~4年後にはほとんどの医師達の間で常識として浸透してくることと、臨床講義を習ってから国家試験を受けるまでのタイムラグを考慮しているからです。

つまり、新しい出題傾向を予想する際には、学会で何が話題になっているのか、とか、院内の合同カンファレンスで議題に上がりやすい内容は何か、ということをチェックしています。そうした内容が新傾向として出題されやすいからです。また、高齢妊娠が増えたことでどんな疾患が増えているか、低容量ピルの適応はどんな人か、といったような社会の流れを反映した問題も見られます。20年前の国試では臨床問題の妊婦は通常20代でしたが、現在では30代後半の初産婦という設定も増えています。これだけでも、国試の出題が時代を反映していることを感じることができます。また産科医療と救急の問題が社会問題になっていることを反映して、産科救急の出題も増えています。

産科は機序の理解が大事


産科に比し、婦人科は暗記で解ける問題が多いという傾向があります。ただし覚えるべき量は多いので、頻出問題にウェイトを置いた勉強法や、語呂あわせなども必要となります。一方、産科は暗記量はそれほど多くないのですが、機序の理解が大切です。分娩時における赤ちゃんの動きと骨盤の相互の位置関係が重要になってきますので、暗記よりは「理解すること」が重要な科目と言えます。機序を理解していないかぎり問題が少しひねってあるだけで対応できなくなってしまいます。

分娩の機序を理解してもらうために、私は立体的な構造を噛み砕いて講義しています。中でも分娩機転、すなわち「母体の骨盤と胎児の頭の位置関係」は必ず理解しなければならない内容ですが、教科書や参考書を読んでいるだけでは、イメージがわきにくいため、なかなか頭に入りにくい分野です。分娩機転は何度も赤ちゃんを取り上げてきた臨床医たちにとっては既に“常識”であるため、通り一遍の解説でスルーしてしまう傾向があるようで、実際、自分が大学生の時も分娩機転の理解には苦しみました。赤ちゃんはなぜあんなに複雑な動きをして生まれてくるのかということに関して、理由まで踏み込んで説明されたことはなかったように思います。

最近は、大学によっては模型を使って講義するところもあるようですが、残念ながら模型を使えば理解が深まるというわけではありません。模型を実際に見せていただいたこともありますが、精巧すぎて余計な情報が多く、目が重要な部分以外に行ってしまったり、立体であるがためにむしろ通過「面」の形状をイメージしにくかったりします。

  • 1
  • 2
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ