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第9回 直前予想(その2)

2010/02/08
Dr.孝志郎

本名:藤澤 孝志郎
宮崎大学を卒業後、東京都多摩老人医療センター(旧)、東京ERに勤務。
現在は専門外来と在宅医療を幅広く展開するクリニックの脳神経内科医長として勤務。日本内科学会認定医でもあり、MECでの講義のほか帝京大学でも講師として「病態生理講座」や「神経内科」、「精神科」等の講義を担当している。

昨年の国家試験の4ヵ月前に作った問題は、それをコピー&ペーストで出題したのではないかと思われるほどそっくりでした。去年までは、アルコール依存症に関しては、患者を入院させると数日後に手がガタガタと震えたり、小動物幻視といって手足を虫が這っている幻覚を見る、という問題しか出題されませんでした。しかし、その前にアルコール依存症を見つけなければ意味がありません。アルコール依存症のスクリーニングは、最近は「CAGE」というたった4つの質問でできるようになっています(表1)。


表1

4つの質問に対して2つ以上がイエスだった人は、非常に高い確率でアルコール依存症の可能性があることになります。「CAGE」を国試で出題するとしたら、間違った質問を1つ加えて5択から「間違った項目を選択せよ」という問題が作成しやすい。そこで予想問題として作成したところ、国試に全く同じ問題が出題されたので「漏洩ではないか」と騒がれたほどです。

また、胆管炎の患者さんの症状は発熱・腹痛・黄疸・ショック・意識障害の5つを「レイノーの5徴」といいますが、これは作成しやすい問題です。この5徴の1つだけウソと差し替えて、「間違っているものをどれか1つ選べ」という問題です。こうした「5徴」や「4徴」はたくさんありますが、5択の問題で出題しやすいので狙い目です。

AIDSの問題はこれまでたくさん出題されていますが、まだ出題されていないテーマがいくつかあります。1つは、AIDSと結核を絡めた問題です。AIDSは体の免疫機能が全体的に下がってくる病気です。AIDSになると、HIVウイルスがヘルパーT細胞を破壊します。その結果、正常時は血液1ccあたり1000個だったヘルパーT細胞が、10年後にはゼロになってしまうのです。ヘルパーT細胞が1000個から900個や800個に減少しても患者さんは気づきませんが、4~5年後にヘルパーT細胞が400個まで減少すると肺結核にかかりやすくなります。

200個まで減少すると、ニューモシスチス肺炎やカンジダ症に、100個を切るとサイトメガロウイルス肺炎にかかりやすくなる傾向があります。つまり、目の前に肺結核の患者がいた際に、こうした知識があれば「この患者さんはAIDSかもしれない」と判断できるわけです。そうなると、例えば患者さんの採血にも「針刺しをすると危ない」と気を使います。あるいは、結核の初発患者に対して、海外旅行などAIDS感染の可能性を問診する必要があるのです。こうした問題はまだ出題されていないので、次の国試に出されるのではないかと考えています。問題文が「CD4が400個以下、咳症状、結核様のCT画像」で、結核とAIDSの2つの病名を選ばせる問題が出題される可能性があります。

さらに、最近はHIV感染者に対してHAART(Highly Active Anti-Retroviral Therapy)という抗ウイルス薬を併用してAIDSの発症を防ぐ治療法が行われています。HAARTによってヘルパーT細胞の数を増やすことができるようになったのです。つまり、HAARTによってAIDSの死亡率が低下する不治の病ではなくなったのです。ところが、このHAARTはまだ国試には出題されていません。当然、出題の可能性が高いということになります。さらに、HAARTで抗ウイルス薬を併用する際にどの組み合わせで使うか、といった問題が出題される可能性もあります。HAARTは、すでに臨床の現場では採用されていますし、最新の成書には記載されているので、過去問にないからといって勉強しないのは危険なことになります。

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