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第8回 直前予想(その1)

2010/02/01
Dr.孝志郎

ところが多くの大学では、鎮痛剤によってなぜ喘息が起こるのかを学生がわかるようには説明していません。「病態生理」でその仕組を説明しましょう。体の細胞にはいろいろな物質がくっついていますが、その中にアラキドン酸という物質があります(図1)。アラキドン酸と細胞との結合は非常に弱い状態にあります。例えば、手をちょっと何かにぶつけただけで、その部分の細胞からアラキドン酸がハズレて、2つの物質に変化します。


図1

1つは、リポキシナーゼという酵素の作用で、アラキドン酸を「ロイコトリエン」というアレルギー物質に変えます。もう1つはシクロオキシゲナーゼという酵素の作用によって、「プロスタグランジン」という痛み物質に変わります。手をどんとぶつけると、1秒くらいすると痛みを感じますが、それはぶつけた部分の細胞からアラキドン酸がハズレて、痛み物質の「プロスタグランジン」に変わり、痛点を強く刺激することで痛みを感じるためです。

ボルタレンやロキソニンによって痛みが収まるのは、アラキドン酸を“痛み物質”に変化させるシクロオキシナーゼという酵素の活性を抑えるためです。痛み物質が出なくなるので痛みが止まるということになります。もし、腰が痛くて眠れないという患者さんに、医師がボルタレンやロキソニンを通常の2倍量を出したとすると、体中のシクロオキシゲナーゼがすべてブロックされることになります。そうなると、アラキドン酸がすべてロイコトリエンというアレルギー物質に変化することになり、アレルギー性の気管支喘息が誘発されることになるのです。これが鎮痛剤の副作用で喘息が発生する病態生理です。

ここまでシンプルな病態生理の図解を作ったのは、臨床医として患者さんに説明するためです。医学知識の無い患者さんにも一定の理解をしていただくために、ここまでわかりやすくする必要がありました。私は、内科の範囲であればほぼすべての分野で、解剖・生化学・生理・病理のすべて噛み砕いて患者さんに説明できるようにしているのです。

また、鎮痛剤は副作用として胃潰瘍を起こすことがあります。この問題もここ3~4年は出題されていないので、復活するのではないかと考えています。第104回では、こうした副作用に関する出題が増えるのではないかと予想されます。

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