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第7回 “病態生理”を理解して丸暗記から卒業する

2009/12/22
Dr.孝志郎

本名:藤澤 孝志郎
宮崎大学を卒業後、東京都多摩老人医療センター(旧)、東京ERに勤務。
現在は専門外来と在宅医療を幅広く展開するクリニックの脳神経内科医長として勤務。日本内科学会認定医でもあり、MECでの講義のほか帝京大学でも講師として「病態生理講座」や「神経内科」、「精神科」等の講義を担当している。

かつての一般的な国家試験対策は「丸暗記」でした。数年前に出題された問題がそのまま“コピー&ペースト”で出題されるのが主流なので、学生さんからすれば「この問題は見たことがあるから解ける」という状態でした。ところが、ここ2~3年は出題傾向が突然変わり、新しい問題が増えています。今まで見たことがないという意味でも「新しい」と言えますが、問題の作り方が違うという意味でも「新しい」のです。

最近の傾向は、現場の臨場感が出ている問題が増えていることです。かつては教科書を虫食いにした穴埋め式問題がほとんどでした。ところが最近は、「年齢や病名がわからない患者さんが運び込まれてきた時点で、何を考えてどうするべきか」といった臨場感のある問題が増えてきたのです。

こうした問題に対処するには、“出題者の意図”を読み解くことが大切です。問題を作成した臨床医が何を考えてこの問題を作ったのか。この患者さんに対して、出題者はどういった視点で見ているのか。それをどれだけ読み取れるかというのが今後の「国試のツボ」になります。このツボを誰が教えられるのかというと、現役臨床医でなければ無理だと思います。現役の臨床医に教えてもらわないと身に付かないでしょう。

 

もう1つの新しい傾向は、問題を解くために、今までは医学部の科目になかった“病態生理”を理解することが必要になっていることです。“病態生理”というのは、なぜこの症状が現れるのかという機序を段階立てて理解することです。

例えば、バイク事故を起こし、右前頭葉あるいは視床のいずれかを損傷した患者さんは、かなりの確率でうつ病になります。右前頭葉や視床を損傷すると、セロトニンとノルアドレナリンが出せなくなり、気分が落ち込んでうつ病になることがわかってきました。そこから、セロトニンとノルアドレナリンを増やす目的で作られたのがうつ病治療薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)です。シナプスから放出されたセロトニンが再吸収されるのを防ぐ薬です。再吸収を阻害されたセロトニンは、シナプスの周りに浮遊することになり、セロトニン濃度が高いままで維持されるようになるので、うつ病を治療できるというわけです。これがうつ病の“病態生理”です。

臨床現場では、患者さんが運び込まれた当初は医師にもよくわからない状態が少なくありません。そこで臨床医は、患者さんの症状を診て、身体の中で何が起こっているかを“病態生理”に基づいて考えます。3年前の国試から、疾患名がはっきりわからなくとも、病態生理的に答えにたどり着くようになっている問題が増えています。

かつての国試には、こうしたモヤッとした問題は資格試験には不適当だとされて出題されませんでした。しかし、最近はより臨場感を反映する問題ということでモヤッとした問題が出題されるようになりました。こうした問題の解法のキーになるのが“病態生理”なのです。

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