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第3回 大学の講義を補う勉強が必要

2009/10/27
Dr.高橋

1981年(昭和56年)に学生だった私は国家試験対策委員でした。当時は出題の情報が漏れることがあるという噂がありましたが、特に何もしていませんでした。しかし、第71回医師国家試験では某大学の教授が卒業試験に出題した問題と同じ問題を国家試験に出して、採点除外になったことがありました。国家試験対策委員がやることは、いろいろな大学に電話して出題委員の傾向を調べることでした。

大学の講義だけでは
試験範囲をカバーできない


公衆衛生は医師国家試験の中で問題数の比率がかなり高くなっています。かつては簡単な問題が多かったので、ちゃんと勉強すれば8割、9割は正解できる科目でした。ところが、ここ数年はどんどん難しくなっています。恐らく「公衆衛生だけが簡単すぎる」という配慮があったのではないでしょうか。時代の要請からすれば、もっと早く難しくなってしかるべきだったのかもしれません。ちゃんと時間を割いて勉強しないと厳しい。大学の講義だけでは絶対に足りません。しかも、公衆衛生は4年生で受講しますが、国家試験を受ける2年後には世の中が変わっています。例えば、2年前に習った統計の数値や法律が2年後には大きく変わることも珍しくないので、ちゃんと勉強しておく必要があるのです。

国家試験対策は地道に勉強してもらうしかありません。当たり前の話で申し訳ありませんが、奇策があるわけではないので深い理解が必要なのです。「学校の授業を真面目に受講していれば充分ではないか」という人もいますが、例えば、消化器内科講座を担当する教授の専門が肝臓だったら大腸はどうなるか。1つの講座で教壇に立つのは教授・准教授・講師の3~4名です。もちろん、肝臓以外の臓器についても教えますが、どうしても手薄になる分野があります。だから、どこかで補充する必要があるのです。教授の専門分野以外は卒業試験には出題されないかもしれないが、国試には間違いなく出題されるのです。

だから、学校の授業では国試の範囲がカバーしきれていないと私は考えています。特に、公衆衛生はそうです。どの大学にもある講座は、産業保健・疫学・環境保健などに限られます。例えば、介護保険の専門家は医学部にいませんし、後期高齢者医療制度の講義ができる先生が大学にいるとは思えません。だから、大学の授業だけでは国試のための勉強が足りないことになるのです。

肝臓が専門の教授が大腸を教えるのはそれほど難しくありませんが、産業保健の専門家が、人口の増減や介護保険、食中毒について深いところまで教えられるかというと、できるものではありません。例えば、「母子保健法に規定されているものはどれか」という問題があったとします。単に正解を暗記せよと教えるのではなく、母子保健法になぜそうした規定があって、正解以外の選択肢は母子保健法ではなく別の法律によるため、と説明しなければ応用力が付かないのです。

2009年に実施された第103回の特徴は、考えさせる問題が増えたことです。例えば、以前であれば「医療保険の自己負担は何割か?」といった問題でした。第103回の問題は臨床形式で、市町村の担当者が「あなたのお子さんは医療費1割負担です」といった場合に根拠となる法律はどれか、という“ひとひねりした問題”が出題されました。また、第103回は殊に顕著でしたが、誰でも解ける簡単な問題とかなり難易度の高い問題の2つに別れる傾向があります。その比率は6対4、あるいは7対3で簡単な問題が多くなっていますが、残りの問題は深い理解がないと解けない問題になっています。

医師国家試験は、元々は大学で真面目に勉強していれば、誰でも合格できる試験でした。ところが、医学が進歩して広範囲に勉強しなければならなくなった。そうなると、効率よく勉強するためには、〈傾向と対策〉を分析する必要がある。そこに、予備校の存在意義があるのです。もちろん、予備校に頼ればすべて解決する、と考えるのは間違いです。しかし、大学で地道に勉強したことを国家試験用にもう1度練り直さないと、楽に合格することは出来ないのです。

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