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キャリアプランとしての臨床研修~臨床研修病院の選び方~
第1回「病院見学、病院実習は就職活動(マッチング)の一環」

2009/09/29
賀来 敦(社会医療法人北斗 北斗病院研修医)

新臨床研修制度が開始されて、研修医の就職形態は大きく変わった。初期臨床研修は、マッチングシステムを利用した「個人と個別施設との直接契約」。つまり、医師の就職そのものである。医学生がマッチングに応募することは、一般学生の企業に対する就職活動とほぼ変わりがない。だとすると、早めに準備し、研究を重ねた上で、自らの描くキャリアを実現できる臨床研修病院を選びたい。そのノウハウを紹介する。

「病院実習や病院見学には、いつ頃から行けばよいのか?」
「いつ頃からなら、病院実習に受け入れてもらえるのか?」

これは医学部に進学した学生であれば、一度は抱く疑問であろう。この質問に対する私の意見は、「学年に関わらずできるだけ早くから行ったほうがよい」である。

しかし、上記の疑問に対して多くの医師・研修医や上級生がこう答える場に遭遇してきた。「そんなに早い時期に行っても意味がない」と。おそらく彼らは「臨床実習が始まる、5~6年生になってからでよいのではないか」「医学知識もなく、OSCEもしていないのに低学年から行ってなんの意味があるのか」と考えているのだろう。

はたして、本当にそうだろうか?

確かに臨床講義が始まるのは一般に3年次からであり、大学によって異なるが、身体診察について学ぶのは4年次終盤のことが多い。「学校で学んだ医学知識を生かしたい」という理由で実習に参加するのであれば、知識や技術のない状態で病院に行き、医師のすることを眺めているだけの実習を、意味がないと考えるのは、ある意味当然かもしれない。

しかし、どのような目的をもって病院実習に訪れるのかによって、答えは変わってくるのではないだろうか。病院実習をマッチングという医師の就職活動の一環だと考えて、できるだけ早めに行くことを私は勧めたいと思う。

一般の就職活動でも、病院実習によく似た活動が、重視されつつある。いわゆる「インターンシップ」である(図)。

「インターンシップ」とは「学生が一定期間を企業等の中で研修生として働き、自分の将来に関連のある就業体験を行える制度」のことで、文部科学省、経済産業省、厚生労働省は、インターンシップを積極的に推進している(注1)。推計では、全国で約12万人の大学生がインターンシップに参加していると試算され(注2)(注3) 、 またあるアンケート調査(注4)では「インターンシップは就職活動の入り口」と考える大学3年生は79%という結果が出ている。

そもそも、就職活動におけるインターンシップは「雇用のミスマッチ」によって起こる早期離職を防止するために導入された。一方、初期臨床研修のマッチングでは、マッチングした病院への就職が義務づけられている。しかし研修開始後の研修施設変更は、一定の制限はあるものの認められている(注5)。「症例や手技の経験が不十分」あるいは「雑用が多い」「人間関係の不備」(注6)などの理由で研修を中断し、研修施設の変更が行われるケースも出てきている。「雇用のミスマッチ」は起こっているのだ。

このようにマッチングにおいても同様の問題が発生している以上、今後は学外病院実習の重要性が、さらに増していくと考えられるだろう。

CBTやOSCEをクリアしていない1~4年生では、受け入れてくれる施設が多くないのではないかと心配する医学生もいるかもしれない。私の経験ではそんな心配はなかった。

確かにクリニカル・クラークシップ(臨床実習)形式での受け入れ施設は限られているが、見学だけなら特に問題はない。ホームページ上で対象を5・6年生に限っている施設もあるが、連絡をしてみると、意外に承諾が得られる。むしろ、実習でお世話になった先輩医師からは好印象を持っていただき、顔と名前を覚えてもらえるケースも多かった。

私が3年生の時に、ある病院の実習で指導してもらった人が、偶然にも私がいま勤務している病院に異動しており、新入職員歓迎会の時に向こうからわざわざ声をかけていただくなど、実際の研修でもずいぶんお世話になっている。ほかにもそういう事例が多々あるので、低学年からの病院実習に気後れする必要はまったくない。

ただし、人気の高い有名臨床研修病院では、5・6年生の対応だけで手いっぱいという場合もある。そのような施設では無理をせず、5・6年生になるまで待つことが肝要だ。それでも、連絡だけはダメ元でもとってみよう。有名臨床研修病院の当面の状況が具体的にわかるだけでも、ほかの医学生を一歩リードできる。

繰り返しになるが、病院実習は医師の就職活動(マッチング)の一環として行うべきだ。その意味で、病院実習のための行動を遅らせることには何のメリットもないことを、このシリーズの開始に当たって強調したいと思う。

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