日経メディカルのロゴ画像

第10回 チェコ・ボヘミア旅行で学んだこと。現状維持は人生発展のリスク!?

2010/03/01
南野陽子(なんの ようこ) ピアニスト

ボヘミア地方研究者の夫妻や童話に出てくる魔女のような風貌のイギリス人作家、ボヘミア地方出身のドイツ人などもいました。しかし私達の心配をよそにツアーは順調に進み、私のコンサートも無事に終えることが出来たのです。最後の晩にボヘミアのビアホールで祝杯を上げることになり、チェコの美味しい黒ビールを飲んでご機嫌になったスラパークさんが自分の身の上について語り始めました。もともと彼はプラハでエンジニアとして長く働いていたとのこと。自分は自由も発展も期待できない自由化される以前のチェコの生活に見切りをつけ、数少ない機会をとらえてウィーンに出て来たのだと言いました。

すると、ある参加者から、「あなたは資本主義を買いかぶっているのではないだろうか?」とか、「人は自分に与えられた環境の中でベストを尽くすように努力するべきじゃないか?」など様々な意見が出ました。

現状維持は最大のリスク!?


しかし、スラパークさんはそれをきっぱりと否定しました。「現状維持のために毎日の仕事をただこなすだけの生活なんて、人生の発展にとっては最大のリスクです。常に危機感を持って前に進むこと、そして自分で実際に行動することこそが大切なのです」。

私を含めた資本主義国の人間は、その場で彼の意見に100パーセント賛同したわけではありませんでしたが、彼がとても強い自らの信念のもとにウィーンに移ってきたことには大きく心を動かされました。

私は今でも、自分の日常生活がただのルーティーンワークになっているように感じると、いつもボヘミアでの彼の言葉を思い出すようにしています。もちろん私自身は現状維持が人生最大のリスクとまで考えているわけではありません。それでも「今の自分はこのままではいけないのではないか?」という危機感を持つように努力してみます。すると東欧のチェコからウィーンに出て来て、新しい世界の中で真剣に生きようとしていたスラパークさんの眼差しが、いつも私に変化を恐れずに新しい一歩を踏み出す勇気を与えてくれるのです。

  • 1
  • 2
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ