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第3回 イタリア人の感性 ~相手との接点を探ってみる

2009/10/20
南野 陽子(なんの ようこ)  ピアニスト

10代から国際舞台で活躍を続けるピアニストの南野陽子さんが、自らの体験を基に医学生、研修医に贈る、好奇心を刺激して役に立つコラム。第3回は、イタリアの地方都市で、素朴な現地の人を相手に、話の盛り上がらない場面をどのように克服したか。

イタリアのトスカーナ地方にアレッツオというルネッサンスの香り漂う古い街があります。この街には、パルマという名前の、知人の女性が住んでいて、私はここで何度も休暇を過ごした経験から、今では、まるでイタリアにおける自分の故郷のように感じている場所でもあります。

パルマはとても社交的な女性で、私がアレッツオを訪れると、彼女は多くの知人宅に連れて行ってくれました。でも私は当初こういった訪問が苦手でした。というのも、地方の小さな都市のイタリア人はとても素朴で、外国人に慣れている都会に住むイタリア人と違って話が盛り上がったりしません。ましてや私は、ウィーンに住む日本人ピアニストということで、相手もどんな話をすればいいのか全くわからない様子なのです。「困ったな‥」と毎回思いながらも、そうした機会を重ねるごとに私は少しずついろいろなことを学んで行きました。

思いがけない発見=ザッハートルテとサッカー


それはイタリア人が必ず関心を示すことを発見したことから始まりました。ウィーンには「ザッハートルテ」という名前のとても有名なチョコレートケーキがあります。イタリアにだって美味しいチョコレートケーキはいくらでもあると思うのですが、イタリアではこのケーキのことをイタリア語読みで「トルタザッケル」と呼び大変人気があります。私がウィーンからこのケーキをお土産に持参すると、イタリア人の老若男女問わず「ザッケル!ザッケル!」と大喜びしてくれました。

もう一つイタリアの老若男女問わず関心の高いものといえばサッカーです。イタリアの普通の家庭では、サッカーの大切な試合が行われている時には必ずテレビがつけっぱなしになっています。どんなに気難しそうな男性でも、私がイタリアのサッカー事情に結構詳しいということがわかった途端に態度が豹変します。そして「どのチームがひいきか」とか「どの選手のファンか」という話になり、留まるところを知らない勢いでそれぞれ自分のサッカー談議を繰り広げてくれました。

初めはお互いに何を話してよいのかわからない状態だったのが、こうして彼らの関心の高い話題で思い切り盛り上がったあとは、他の話題に変わっても嘘のように会話がスムーズに運ぶようになります。相手の方から「どうしてヨーロッパに勉強しに来たのか?」とか「ウィーンに住んでいて苦労することは何か?」といった内容の質問をしてくれるようになると、こちらも相手のことを聞きやすくなりました。

そして私は、このようなコミュニケーションを取りながら少しずつその人の価値観や考え方を知ることにより、お互いの距離はぐっと近くなるのだということを覚えて行きました。

共通の話題を見つけてみよう


コミュニケーションとは、さまざまな要素から成り立っていて、言葉というのはその1つの要素に過ぎません。目の前の相手のことを理解してコミュニケーションを図るためには、いくつもの要素が必要だからです。そしてそれには、相手がどこの国の人であっても食べ物やスポーツ、趣味の話など、どこかに共通の接点を見つけ会話を交わすことが、とても大きな助けになります。仮にそれが難しければ最初はお天気の話だっていいのです。

まずは小さな話題から始めて相手との間の垣根を少しずつ取り除くことによって、お互いの距離が近づき、理解が深まっていくのですから‥。

さあ、みなさんもどんな小さなことでも構いません、まずは相手との共通の接点を見つけてコミュニケーションをしてみませんか?

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