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各科診療域のスペシャリスト・インタビュー
過酷な研修医時代と基礎研究への没頭が“いま”の自分をつくった
第4回 京都大学医学部 泌尿器科学教室教授 小川 修 氏

2009/12/22
京都大学医学部 泌尿器科学教室教授 小川修 氏

――ご自分は医師に向いてないと思ったことはありますか?

小川 臨床医というのは、それほど頭脳明晰でなくてもいい職業だと思っています。特殊な才能はなくてもいいので、医師としての総合力で合格点をとってほしい。そして出来ればある専門分野で得意なものを磨いてほしいと思っています。僕自身も決して特殊な才能のある泌尿器科医ではないんです。研究という面でも本庶先生には到底かなわない。しかし、医師としての総合力という面からは、誰にも負けたくないという気持ちはあります。こういうことから言えば、医師に向いていないと思ったことはありありませんね。ただ、責任の重さから逃げ出したくなることは、今でも時々ありますよ。


――医師・患者関係のコミュニケーションがいろいろと問題になっています。先生が患者さんと接するときに気を付けていることは何かありますか?

小川 これは医師・患者関係に限りませんが、“距離感”を大切にすること。例えば、「先生、今度ゴルフに行きましょう」「一緒にご飯を食べに行きましょう」と、距離感を縮めようとする患者さんもおられます。それは善意で言ってくれるんだけれども、プロの医師としてはけじめが必要です。適切な距離感をちゃんと心得ないと、大切なことを見失う可能性があります。

同じようなことで、以前、先輩の指導医から注意されたことがあります。卒後2年目の時だったと思います。患者さんへの親近感を表すために、“ため口”というか、友だち感覚で話した方がいいんじゃないかと思っていた時があったんです。その時、指導医の先生に「患者さんは、皆さんあなたの人生の先輩ですよ。だから、どんなに親しくなっても、ずっと敬語だけは使いなさい」と。以来僕は、どんなに親しくなっても、患者さんに“ため口”はきかない。ものすごくありがたい忠告でした。だから、このことだけは学生にも口を酸っぱくして言っています。


――現在の仕事の楽しみと、ストレス発散法は。

小川 今の大学病院は、正直言っていつも楽しく仕事をできる環境とは言えません。なぜなら、病院経営のことばかりが問題となっていて、僕たちが情熱を持っている教育や研究にさける時間が無くなってきているからです。それに給料も良くないです。しかし、1つだけ、何にも代え難い楽しみがある。それは、毎年、若い研修医が必ず何人か入ってくること。彼らと出会えるのが、一番の楽しみです。

医師教育は本当に大切ですし、おもしろい。研修医時代の理不尽に厳しかったオーベンの先生だって、何も好き好んで怒っていた訳ではないと思います。2時間も3時間も説教するなんて、はっきり言って、説教する側もしんどい。やっぱり「こいつをちゃんと育てあげよう」という使命感みたいなものがあったと思います。今、初期臨床研修の中で、研修医を2~3時間も怒ることの出来る指導医はいないと思いますよ。しんどいもん。そういう意味では、昔かたぎの鬼軍曹的な教官が必要かもしれませんね。

そうそう、仕事のストレス発散は、時間をやりくりして出かける月2回のゴルフ。スコアが良いに越したことはありませんが、たとえ悪くとも、気の合う仲間とのコンペは楽しみです。これが唯一のストレス発散かなあ。

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