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各科診療域のスペシャリスト・インタビュー
未来の教科書に載る外科医療を!国内初の「高度医療」認定を受けた北の“鉄人”
第3回 岩手医科大学外科学教室 若林 剛教授

2009/11/24
岩手医科大学外科学教室 若林剛教授

――医学生、研修医のキャリア形成について、日頃から感じておられることはありますか?

若林 初期研修を終えた研修医に注意して欲しいのは、後期研修をどこで受けるかです。というのも、後期研修の研修病院に値しないような病院が、マンパワーが欲しいというだけの理由で、研修医を募集しているケースがあるんですね。初期研修であれば、まだヨチヨチ歩きの若い医師を指導できる医師は、現場にたくさんいます。ところが、後期研修になると、ある程度、専門性が必要です。そういう専門的な医療の指導ができる医師のいる病院の数は、初期研修に比べて10分の1くらいに減るはずなのです。初期研修病院が100あるとしたら、後期研修の病院は10くらいに減らないとおかしい。ところが、初期研修医を受け入れた病院は、そのまま彼らを囲い込んで、後期研修も受けさせようとするところが多い。これは、どう見てもおかしな現象です。 また、僕らがものすごく心配しているのは、根無し草の医師が、急速に増えるのではないかという問題です。初期研修、後期研修を終えて、大学の教室にも所属せず、体系的な教育も受けず、学位も取らない根無し草の医師が、これからどんどん増えていくのではないか。彼らは一匹狼だから、協調性がないし、困った時に、助けてくれる仲間もいない。一番恐いのは、彼らが、実力もないのに、いきなり開業してしまうことです。日本には、医師の開業の制限がありませんからね。

――世界的に見ると、特殊だそうですね。

若林 まったく特殊です。こんな馬鹿なことってないんですよ。例えばドイツの場合なら、あるエリアには、人口が何人だから、開業医は何人と決まっている。さらに、開業医としての資格も取らなければならない。開業医というのは、目の前に来た患者の問題を素速く見つけて、必要に応じて、専門医に送るわけですから、非常に幅広い知識と経験が必要なのです。だから、ドイツでは厳しい資格試験が課されている。

日本はまったく逆で、医師免許さえあれば、無制限に開業できる。しかも標榜科まで自由なのです。研修する場所が自由になったおかげで、一匹狼の、技術も知識も乏しい開業医がどんどん増えていったら、たいへんなことになります。だから、初期研修、後期研修を終えた若い医師に言いたいのは、開業するのは構わないけれども、大きめの病院でせめてもう10年間くらいは、修行を積んでからにして欲しいということですね。

――学位より専門医という流れについてはどうですか?

若林 文科省も最近になって、大学院と学位の意味づけの幅を、少し広げてくれました。大学院の目的の1つは、研究の指導ができる指導者を育てること。これは従来と同じですが、もう1つの目的が加わったのです。その目的とは、臨床医を指導できる高度臨床医を育てること。僕らのような臨床家にはありがたいことに、研究と臨床の両方を選べるようにしてくれたわけですね。だから例えば、初期研修を終えた後で、大学院に戻って、臨床研究をしながら学位を取れるようになりました。研究室にこもって、試験管を振らなくてもいいのです。臨床を離れなくてもいいので、並行して、専門医の勉強をするのも楽になりました。

この変化に対応して、岩手医大では、今年春から、研究ベースの大学院と臨床ベースの大学院のどちらかを選べるシステムを作りました。臨床ベースの大学院に入った人は、臨床をやりながら、臨床研究をして、学位が取れます。同時に、臨床で腕を磨いて、早めに専門医の資格を取ることもできる。そういう道も開かれつつあることを、医学生、研修医の皆さんには、ぜひ知っておいて欲しいですね。

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