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各科診療域のスペシャリスト・インタビュー
未来の教科書に載る外科医療を!国内初の「高度医療」認定を受けた北の“鉄人”
第3回 岩手医科大学外科学教室 若林 剛教授

2009/11/24
岩手医科大学外科学教室 若林剛教授

ところが、「先進医療」がこういう主旨の制度になると、まったく新しい、日本では1施設でしかやっていないような先端医療は「先進医療」として認めることができにくくなった。そこで、「先進医療の一類型」として、「科学的評価可能なデータ収集の迅速化を図ることを目的として」登場したのが「高度医療」という枠組みです。薬事未承認の医療機器とか、薬事未承認の薬剤を使った、まったく新しい医療技術を「高度医療」として認める。ただし、薬事承認のためのデータを取って、報告してくださいよという形で認定されるのが「高度医療」なのです。岩手医大では、2008年から腹腔鏡下の肥満手術(スリーブ状胃切除)を始めましたが、これも近く先進医療もしくは高度医療の申請をする予定です。

腹腔鏡補助下ドナー肝切除には
韓国の巨大病院からも見学が


――先進医療、高度医療というのは、医療施設にとっては、さほど費用対効果の高い医療ではないとも聞いていますが。

若林 岩手医大でも、当初は「これは私立大学でやるべき医療なのか?」「赤字になるのではないか?」と懸念する声がありました。実際、ある程度、財政的な余裕がある病院でないと、手がけるのは難しいのが先進医療、高度医療です。

ただ、具体的な稼働額に直接は反映されないかも知れませんが、大きなメリットがあることも確かです。先進医療、高度医療は、チーム医療の結果として初めて実施できる高度な医療です。こうした高度な医療を手がけることで、結果的に岩手医大の総合力が向上するというメリットがあると思います。

また、僕が思いのほか影響が大きいと思っているのは、こうした先端的な医療を手がけることで、岩手医大のブランド力が上がることです。高度医療、先進医療に認定されると、その手術を見学しに、日本中、場合によっては世界中から医師がやって来ます。

例えば、まだ高度医療にはなっていないのですが、岩手医大では、腹腔鏡補助下ドナー肝切除という先端的な医療を、これまで十数例(2009年10月現在)実施しています。生体肝移植のドナー(肝臓を提供する人)に対して、内視鏡を使って、低侵襲で出血も少ない手術を実施するのですが、この手術を十数例以上手がけている医療施設は、いま世界でも3施設しかない。米国に1施設、フランスに1施設、それと岩手医大です。こういう手術を工夫し、実施していると、東大、京大からも医師が見学に来ます。韓国のソウルに、年間に肝移植を300例もやるアサン・メディカル・センターという巨大な病院がありますが、そこの移植の外科医も、わざわざ見学に来ました。この腹腔鏡補助下ドナー肝切除がきっかけになって「先端医療開発特区(スーパー特区)」にも入れてもらい、補助金ももらえる予定です。こういう状況を見て、例えば医学生、研修医はどう思うでしょう? これらのことで、岩手医大のブランド力が上がる効果もあるのではと思っています。

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