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各科診療域のスペシャリスト・インタビュー
核医学は、疾患を画像として捉える。PET検査の黎明期から、その有用性を啓蒙
第2回 厚地記念クリニック院長 陣之内正史 氏

2009/11/10
厚地記念クリニック院長 陣之内正史 氏

――陣之内先生の手掛けられている画像診断や核医学の魅力を後輩の医師の方々に。

陣之内 一言でいうと、病気を画像としてとらえられるという点が魅力ですね。がんでいえば、がんの病巣がはっきり見えます。また、脳疾患、特に痴呆の領域では、現在も研究されていますが、アルツハイマーが発症する前にすでに診断できます。発症の原因といわれているアミロイドが、脳にどれだけ沈着しているかが、見られるようになってきています。病気の発症前でも、その予兆を見ることができる。これは核医学の独壇場でしょうね。

MRの世界では多少、応用はありますが感度が違います。例えば、脳に集まるアミロイドにくっつく薬がありますね。これをアイソトープで標識してイメージングすると見えてきます。それは分子レベルがものすごく少なくても見えるんですが、MRで見ようとすると相当な量を入れていかないと信号変化として出てこない。その感度差がものすごく違います。

――現在の仕事の楽しみ、その醍醐味をお聞かせください。

陣之内 他の病院でCT、MRで、写っていても分からなかった病変が、PETでよく見つかることがあります。これはうれしいですね。後で見ると、ここだというのが分かるけど、これを最初から見つけるのはものすごく難しい。見つけにくかった病変を見つけることが醍醐味で、疾患を画像としてとらえるのはPETの独壇場ということですね。だから、がんの正確な診断ができて、治療に直結できる情報を提供できるという点がPETの強みと言えるでしょうね。

――研修医時代に、“一人前に扱われて感動した”という話がありました。その頃の患者さんと現在の患者さんとで、身近に感じる変化はありますか。

陣之内 昔に比べて、極端に変わったのは、「患者さんの知識レベルが上がった」ということです。ものすごく話しやすくなりました。昔なら、「こんな専門的な話は理解できないかな」というレベルのでも、こちらの話を理解してくれる。また、妙に深いことを知っているので、一般的な話がちょっと通じにくかったりすることもありますが、きちんと話せば理解してくれる人たちですね。それはものすごく、医師にとっても有り難いことだと思います。モンスターペイシェントなど、横暴な患者には、幸いなことに会ったことはないですね。

――最後に、後進の医学生、研修医にメッセージをお願いします。

陣之内 今はほとんどしてないですが、学生時代6年間、弓道をしていたんですよ。恥ずかしながら三段です。その弓道の師匠がものすごくいい人で、本業は電気屋さんなのですが、「病気を診る医者になるな」とよく言っていました。「病気を診ずして病人を診よ」。これは慈恵医大を創立した高木兼寛の有名な言葉ですが、弓道の師匠にとっては同郷宮崎の偉大な医師の言葉ですから、私たち医学生に対して伝えておきたかったんでしょうね。私もそのまま、後輩に向かって、よく言っています。

それと、弓道の師匠がよく言っていたもう一つ言葉が、「一所懸命」。一生懸命ではなくて、鎌倉武士の「一所懸命」です。この意味は、“人間は、いろいろなことがいっぺんにできるわけではない。目の前の課題を1つ1つ片付けていくことが大切”ということです。そうすることによってこそ、道が究められる。医師でいえば、一所懸命が将来の良い医者になることにつながるのです。1年、1年という「年の単位」でもあるし、月の単位、日の単位もあるし時間の単位もあります。今は、これに集中しようと考えろと、師匠は言っていました。

この師匠は、残念ながら膵臓がんで亡くなってしまったのですが、ここでPET検査を受けた時、「ああ、お前に診てもらってよかった」と言ってくれました。

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