日経メディカルのロゴ画像

各科診療域のスペシャリスト・インタビュー
核医学は、疾患を画像として捉える。PET検査の黎明期から、その有用性を啓蒙
第2回 厚地記念クリニック院長 陣之内正史 氏

2009/11/10
厚地記念クリニック院長 陣之内正史 氏

厚地記念クリニック院長 陣之内正史 氏

第2回は、厚地記念クリニック院長 陣之内正史氏。子どものころ、普段親しい叔父の顔が、診察の時、医者の顔に変わるのを目の当たりにして、「カッコいいなあ」と思ったことが、医師志望への契機となる。九大の応用原子核工学と宮崎大学の医学部に合格。もし九大に進学していれば、現在は、どこかの原子力発電所で技術者として働いていたと語る。核医学を学び、PET検査に大きな可能性を見出し、その黎明期から、医学界、一般へ有用性の啓蒙活動を続け、「PET伝道者」の異名を持つ。その陣之内氏に語っていただいた。

(聞き手:日経BPクロスメディア本部 プロデューサー 阪田英也 構成:原田英子)

――陣之内先生の現在のお仕事の内容を教えてください。

陣之内 専門は放射線科、その中の核医学という分野です。PETあるいはPET-CTを使ったがんの診断がメインです。主に、FDG薬剤を使い、それが体の中に集積されるメカニズムを応用した画像診断を行っています。現在では、鹿児島県内のさまざまな病院から、がんの疑いのある患者さんやがんに罹患した患者さんを紹介していただき、主治医に対して、がんの診断については、“ドクターズドクター”という立場でアドバイスしています。

PET検査の目的は、がんがあるかどうかを判断する「鑑別診断」、がんと分かった患者さんの「病期(ステージ)診断」、治療後の「治療効果の判定」、そして「再発診断」の4つがあります。その中で一番依頼が多いのは「再発診断」です。

――PET検査は、わずか7年前には保険診療に収載されておらず、その価値も知る人が少なかった。その中で陣之内先生は、PET検査の正しい認識を広めることに腐心されたと聞いていますが。

陣之内 当院は、平成14年6月のオープンですが、PET検査は、その年の4月に保険適用になったんです。PET検査を必要とする患者さんは、当院に直接受診することはなく、県内の他の病院やクリニックから紹介をいただかなければいけない。患者さんにPET検査の有用性を理解していただくことは、もちろんですが、その前に医師の方々がPET検査の内容とがん診療への貢献度を知っていなければオーダーが来ません。

まずは、県内の病院を回って医局向けのミニ講演会を実施し、また、各診療域の研究会にPETの症例を持参して、そのスライドを見ていただいて発言するといった活動を根気よく続けました。そして県内で発行している医師会雑誌に「PET検査の有用性」に関する一文を書き、掲載していただきました。これは、医師のみなさんがよく読んでくれていて評判がよかったですね。

――現在は、PET検査の有用性を否定する人たちはいないのでしょうか。

陣之内 ほとんどいないですね。「画像を自分が読めないと患者さんに説明できない」、「分からないからオーダーしない」というのはありますが。肺がんや悪性リンパ腫などの専門医の先生方は、割合早くからPET検査の存在を知っていて、「前からやりたいと思っていた」という人たちが多かったように思います。特に、悪性リンパ腫には非常に役立つので、当院のオープン前から「いつですか、いつですか?」と言って待たれていました。ここの臨床の第1号も悪性リンパ腫でした。

――日常の勤務時間についてはいかがですか。

陣之内 月曜日から土曜日まで、毎日朝8時半から夕方6時ぐらいまで働いています。最近は少なくなりましたけれども、日曜日も講演などで潰れることがあります。問診をして診察。PET検査後1時間半ぐらいで画像が上がってきますので、それを読影してリポートを書きます。保険診療で主治医が説明したいという場合以外は、ご本人にかなりきちんと説明して、画像も渡します。

診察、問診は1日平均6~7名、読影は18~20人。放射線科は、私を含め3人いますが、画像は全部診ています。オープンしたての最初のひと月は、私1人でした。7月に鹿児島大から放射線科の先生を派遣してもらいました。PETは経験したことのない先生でしたが、CTの部分は分かるので、当時は別々に読影して、診断を統合するという手順を用いていました。

――PET-CTが導入されて、その両方の画像がフュージョンできるようになったのはいつですか。

陣之内 平成16年11月のことです。PET検査の画像にCTの画像が加わるので、結果的に診断は楽になりました。CTに関しては数百枚におよぶ画像を見なくてはならないので、読影はすごく大変なんですけれども、がんのある部位をはっきりと指摘できるので、「ああでもない、こうでもない」というのがなくなって、診断の確実性が上がりました。

――開院当時は、PET検査の有用性を中核病院や大学病院、クリニックなど、医師を対象に広めようと思っていらっしゃった。そして、ある程度PET検査に対する正しい知識が広まり理解を得られてからは、広報・啓蒙の軸は、一般の方々に置くようになったのでしょうか。

陣之内 そうですね。先に自分たちの地域の足元を固めようということですね。PET検査施設は、どこにでもある施設ではないので、“地元の共有財産なんだ”という認識を広めることが大切です。また、私自身がPET検査を通じて、地元の人たちに役立とうと思っていました。

「当院が成功すると、PET検査が全国に広がる」と言ったのが、当院の母体である医療法人慈風会の理事長の厚地先生で、その言葉どおり、PETブームの先駆けとなりました。全国からPET検査や、その画像の読影の方法などのノウハウを学びに、経営者もドクターも技師も見学に来て、開院から数年間は、非常に忙しい時期でした。しかし、こういう活動を続けていくと、PETが広がっていくという確かな手ごたえもありました。

そして、当院での診療を続けていく中で、私自身、PET検査の有用性を再認識していましたので、「もっと知ってもらいたい」という気持ちから執筆し、出版したのが、『PET画像診断マニュアル』(インナービジョン刊)という書籍です。この本には、PET検査に携わる医師向けに、読影のノウハウがその初歩から中級レベルまで系統だって整理されています。医学生、研修医のみなさんにも1度、手に取っていただきたいですね。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 過酷な研修医時代と基礎研究への没頭が“いま”の自分をつくった(2009年12月22日)
    京都大学医学部 泌尿器科学教室教授 小川修 氏

    「10年後の自分が見えない」という不安をかかえる医師の卵たちに、各科診療域の先輩であり、スペシャリストとしての評価の高いドクターに、仕事の魅力と医師のあるべき姿を語ってもらい、明日の医師にエールを送る。第4回は、ラグビー部入部が泌尿器医の道へつながり、過酷な研修医時代と基礎研究に没頭したことが“いま”の自分をつくったと語る京都大学医学部泌尿器科学教室教授 小川 修 氏。(続きを読む

  • 未来の教科書に載る外科医療を!国内初の「高度医療」認定を受けた北の“鉄人”(2009年11月24日)
    岩手医科大学外科学教室 若林剛教授

    新臨床研修制度の導入以来、研修医の不足に悩む病院が多い中、ここ3年ほどで、外科学教室への入室者を倍増させた大学病院がある。岩手医科大学病院(以下、岩手医大)だ。同大学では、2005年9月に、慶應義塾大学(以下、慶応大)から若林剛氏を教授として迎えた。翌06年7月には外科系講座を再編し、肝・胆・膵・移植、食道・胃、大腸、乳腺・甲状腺から小児外科、内視鏡外科、一般外科までカバーする、国内でも最大級の規模の外科学教室を作った。そのトップとして教室を牽引する若林教授は、慶応時代から手がけてきた生体肝移植を岩手県で初めて実施するなど、数多くの先端的な医療を積極的に導入した。一方、旧来の医局制度の改革にも取り組み(続きを読む

  • 核医学は、疾患を画像として捉える。PET検査の黎明期から、その有用性を啓蒙(2009年11月10日)
    厚地記念クリニック院長 陣之内正史 氏

    「10年後の自分が見えない」という不安をかかえる医師の卵たちに、各科診療域の先輩であり、スペシャリストとしての評価の高いドクターに、仕事の魅力と医師のあるべき姿を語ってもらい、明日の医師にエールを送る。(続きを読む

  • 診断をリードする、ドクターズ・ドクター“放射線科”。その3本柱の1つ、核医学の魅力を語る(2009年9月29日)
    獨協医科大学病院PETセンターのセンター長 村上康二教授

この記事を読んでいる人におすすめ