日経メディカルのロゴ画像

医者選びは女性が美容師を選ぶのに似ている「自分にとってかけがえのないもの」をあずけられる相手、とは

2009/05/12
医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班 狩生聖子

 医師であれば実際の治療がこれにあたる。実際の治療だけでなく、がんの治療法について複数の選択肢を提示して、「どれを選ぶかはお任せします」的な医師も少なくない中で、
「あなたにはこの方法がいいと思う」と自信を持って言ってくれる医師は頼りがいがある。また、薬の処方について、
「仕事がお忙しいようなら、多めに薬を出しましょうか?」といってくれる医師もよい。通院の手間や診察料の問題だけではない。同じ病気だからとひとくくりにせずに、目の前の患者がどんな生活をしているのか、というところに思いをはせてくれたことをうれしいと思うのである。

「異常なし」の結果を自分のことのように喜んでくれた医師
人間性を患者は敏感に感じ取る

 最後に「人間性」。これはどんな職業にも通じることだろうが、人間性に問題があればどんなに技術が優れていても人は集まらないだろう。客の指名が多い美容師は雰囲気がよい。疲れているお客さんには必要以上に話しかけないなどの思いやりも持っている。
 一方、ある美容室には業界内でカット技術が優れていることで知られている美容師がいる。が、髪をカットしながら自分の自慢話に終始するということから、私の周囲の評判はあまりよくない。一番ポピュラーなメニューである「パーマ&カット」にかかる時間はおよそ3時間。この貴重な3時間、一緒にいてリラックスできる美容師とそうでない美容師とでは満足度が大きく違ってくる。

医師でいえば受診したことでそれまで抱いていた不安感が解消され、「時間を割いて受診して本当によかった」と思えるような相手がよい。
友人の1人から検診で乳がんの疑いを指摘され、精密検査を受けた経験を聞いた。主治医でマンモトーム生検を担当した女性医師は「異常なし」の結果をわざわざ電話で知らせてきたという。
「本当によかったですね」と自分のことのように喜んでくれたそうだ。友人は機会があるたびにこの経験を話し、「乳がん検診に行くならあの先生がいいよ」とすすめている。こうした口コミで患者が増えていくのだな、と実感する典型的な例だ。
 こうした患者のニーズに敏感な医療機関もある。東海大学付属病院では数年前から優れた外科医の確保に力を入れているが、担当者の医師によるとその条件とは「第一に臨床の腕、次が人柄のよさで、最後が研究の業績」ということだった。

医療ライターという仕事をしていると医療の問題点ばかりに目が行き、求めるものも多くなってしまう。でも、患者の視点に戻ると求めるものはけっこうシンプルだ。実際、多くの患者たちは医者の悪口!?をいいながらも頼りにし、心のよりどころにしている。
ホッとできる行きつけの美容室にように、行くと元気になれるかかりつけ医を誰もが探している。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップページ私の考える良い医者・良い医療 > 私の考える良い医者・良い医療 新着一覧

私の考える良い医者・良い医療 新着一覧

  • 医者選びは女性が美容師を選ぶのに似ている「自分にとってかけがえのないもの」をあずけられる相手、とは(2009年5月12日)
    医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班 狩生聖子

    久しぶりに実家に帰り、偶然開けた引出しには病院の診察券が山ほど入っている。母親がここ数年、原因不明のしびれで悩んでいる。「あの病院はいいよ」と噂を聞くたびに受診してみるが、なかなか効果が得られないのだという。「A先生がいてくれたら、よかったのに」とぼやいている。数年前まで内科の医師として近くの総合病院に来ていたA医師はとても話しやすく、疑問があったら遠慮なくいえる雰囲気があった。治療方針も明確で、説明もわかりやすく、説得力があり、母はかかりつけ医としてその医師をとても頼りにしていたという。(続きを読む

  • 一人の名医よりも複数の良医、有名病院よりも優良病院(2009年4月16日)
    統合医療福祉中村直行研究室 中村直行

     「良い医者、良い医療とは」と聞かれれば、医療を受ける側か、提供する側かによって返ってくる答えが異なる場合もあるでしょう。また、勤務医か開業医かによっても捉えかたに微妙な温度差が出てくる場合もあります。想定できる範囲で無理やり結論を引き出すと、患者やご家族のお気持ちや視点も理解できて、安全で最良の医療を最小必要限提供し、患者やご家族を安心させることができる医者や医療が、「良い医者、良い医療」ということになるのかもしれません。では、反対にお薦めできない医者とは一体どのような人なのでしょうか。あくまでも主観ですが、箇条書きにしてみましょう。(続きを読む

  • 臨床試験のプラセボ効果は排除の対象。
    しかし、医師の人間力は患者治癒の源泉
    (2009年4月13日)
    医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班デスク 油井富雄

    多くの場合、取材対象となる医師は、「その道の権威」「研究者として業績がある医師」「関係する医学学会で重要な位置にある医師」「肩書きが立派な医師」「コメントを的確に出してくれる医師」「話題となっている医師」……などである。(続きを読む

  • 良医はゼネラリスト(2009年3月25日)
    医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班シニアライター 田野井真緒
  • コミュニケーションの重要性(2009年3月7日)
    医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班記者 西森 聡

この記事を読んでいる人におすすめ