何軒目かでようやく正しい診断がつき安堵
「あなたにはこの治療がよい」といってくれたらうれしい
命にかかわることもある病気を診断・治療する医療とヘアスタイルを施す美容院。目的や実施する内容は大きく違うが、「髪は女の命」といわれるように、体と同様、髪も自分にとってかけがえのないもの。どう扱われるかで運命がかわるといっても過言ではない。
実際、利用する側にとって、求めるものが両者、ぴたりと一致するのだ。具体的には「技術」「利用者ごとに合う施術を提供できる」「人間性」の3つである。
美容師選びのポイントになる技術はカットやパーマなどの技術である。私が最も長く通っている店の美容師はとにかく、カットが速くてうまい。その技術は業界でも有名らしいが最初はほかの美容師のそれとどう違うのか、まったくわからなかった。
しかし、カットをしてもらって2、3カ月たつとその差がはっきりとわかった。それまでの美容師ではちょっと伸びると収集がつかなくなってしまうヘアスタイルが、上手な美容師にかかるとまったく問題がなく、長いなら長いまま、維持できる。邪魔にすらならないのだ。
髪の特徴を理解しているからできることなのだろう。これが医師であれば診断が適格だということだろうか。問診や検査から患者の訴えの原因を探り、それに応じた治療を提供してくれること。簡単なようだが難しい。以前、知り合いの外科医からこういわれたことがある。
「優秀な医師かどうかは診断名をきちんといえるかどうかでわかるよ。病院に行ったら『私の病気は何ですか?』って聞いてごらん。意外に答えられない医師が多いんだ」
確かに軽いと思われる皮膚の症状でさえ、処方された薬でなかなかよくならないことがある。何軒目かでようやく診断がつき、症状がみるみるよくなると患者は、「やっと原因がわかった」と本当にうれしく思うものだ。
次に「利用者ごとに合う施術を提供できる」という点。これは前出の技術をお客さんや患者さんの状態に合わせてアレンジできるかどうかということ。
美容室に行くと必ず「どんな髪型にしますか?」と聞かれる。口で細かく要望を説明する客もいれば、雑誌やヘアカタログなどから希望のスタイルを提示する人もいる。若い美容師などは「はいわかりました」と黙って施術を始めるが、多くの客が望むのは、
「あなたにはこちらの髪形のほうが似合うのではないか」「髪質から考えると別の方法でパーマをかけるのがいいのではないか」といった具合に専門家の立場で利用者に合ったヘアスタイルを親身に考え、アドバイスしてくれる美容師である。