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臨床試験のプラセボ効果は排除の対象。
しかし、医師の人間力は患者治癒の源泉

2009/04/13
医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班デスク 油井富雄

媒体で差別する予防医学の医者。何のための予防医学?

その逆のケースもある。予防医学を提唱する医師を訪ねた時、けんか腰の言葉を吐いて取材をせずに帰ってきたこともある。

同じくヌード満載の別の夕刊紙の取材だった。遠慮がちに新聞を提示すると「そんな新聞に載せてほしくない」という。他の話題なら、さもありなんと、と静かに帰ってきたかもしれない。

しかし、その医師は国立大学の教授で予防医学を研究。それを広く広めることが研究の結実でもあるはずだ。予防医学の研究は、その知識を広めることも重要な仕事ではないのか。それを媒体で差別する姿勢が、なんとなくいやらしく感じた。

「先生は、その新聞を読む読者の診察は拒否するのですか。患者がどんな新聞を読むかで差別するのですか」と言ってしまった。

名医紹介やランキングは、情報の一つでしかない。
会っただけで元気にする人間力を備えた医師

医療物の取材を20数年やっていると、知人が病気(特にがんの場合が多い)になった時によく相談される。どこへ行ったらいいのかと……正直困ってしまうことがある。

名医紹介や病院ランキング等の取材もしたことがある。これらは情報の一つでしかなく、その人にとって名医か、いい病院かは別。患者の相性で名医が名医でなくなり、病院も一人ひとりの患者との相性で決まるものだという実感がある。

 取材で訪ねるのと、患者として訪ねるのとでは違う。ただ自分自身が病気になった時に通うかどうかの判断の基準がある。それは、取材の内容が充実していたかどうかではなく、取材後、病院や医院を後にした時にすがすがしい気持ちや元気になる場合がある。その医師のもつ人間力みたいなものがそうさせるのだろうか。

 取材での対応、患者との対応。人間そう変わるものではない。話し言葉、接する態度や姿勢、雰囲気、言葉と言葉の間の沈黙、何がそうなるのか知らないが、病気でもない当方がすがすがしい気持ちや元気にしてくれる医師に何人か出会ったことがある。

 医師のもつ人間力は、臨床試験ではプラセボ(偽薬)効果になり、バイアスがかかった判断だ。当然、統計学では除外される。しかし、医師の場合、患者にその人間力を源泉として与える“プラセボ効果”は、熟練の技、人間力そのもので付加価値を備えた“良い医者”ということになる。

 薬学の世界でも、個人に合った創薬が叫ばれている。医師の場合でも、個人個人に適合した医師を選択することが必要なのである。人間力とは、プラセボ効果でEBMの評価の対象外、名医紹介やンキング、他人の噂では測れない基準でもある。

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私の考える良い医者・良い医療 新着一覧

  • 医者選びは女性が美容師を選ぶのに似ている「自分にとってかけがえのないもの」をあずけられる相手、とは(2009年5月12日)
    医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班 狩生聖子

    久しぶりに実家に帰り、偶然開けた引出しには病院の診察券が山ほど入っている。母親がここ数年、原因不明のしびれで悩んでいる。「あの病院はいいよ」と噂を聞くたびに受診してみるが、なかなか効果が得られないのだという。「A先生がいてくれたら、よかったのに」とぼやいている。数年前まで内科の医師として近くの総合病院に来ていたA医師はとても話しやすく、疑問があったら遠慮なくいえる雰囲気があった。治療方針も明確で、説明もわかりやすく、説得力があり、母はかかりつけ医としてその医師をとても頼りにしていたという。(続きを読む

  • 一人の名医よりも複数の良医、有名病院よりも優良病院(2009年4月16日)
    統合医療福祉中村直行研究室 中村直行

     「良い医者、良い医療とは」と聞かれれば、医療を受ける側か、提供する側かによって返ってくる答えが異なる場合もあるでしょう。また、勤務医か開業医かによっても捉えかたに微妙な温度差が出てくる場合もあります。想定できる範囲で無理やり結論を引き出すと、患者やご家族のお気持ちや視点も理解できて、安全で最良の医療を最小必要限提供し、患者やご家族を安心させることができる医者や医療が、「良い医者、良い医療」ということになるのかもしれません。では、反対にお薦めできない医者とは一体どのような人なのでしょうか。あくまでも主観ですが、箇条書きにしてみましょう。(続きを読む

  • 臨床試験のプラセボ効果は排除の対象。
    しかし、医師の人間力は患者治癒の源泉
    (2009年4月13日)
    医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班デスク 油井富雄

    多くの場合、取材対象となる医師は、「その道の権威」「研究者として業績がある医師」「関係する医学学会で重要な位置にある医師」「肩書きが立派な医師」「コメントを的確に出してくれる医師」「話題となっている医師」……などである。(続きを読む

  • 良医はゼネラリスト(2009年3月25日)
    医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班シニアライター 田野井真緒
  • コミュニケーションの重要性(2009年3月7日)
    医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班記者 西森 聡

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