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良医はゼネラリスト

2009/03/25
医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班シニアライター 田野井真緒

「医師はコーチであり、応援団に過ぎません。走るのは患者さんです。私たちにできることは選手である患者さんが完走できるようにアドバイスを送ることだけです」。

 高血圧の取材をしているとき、循環器内科の医師は、いわゆる生活習慣病治療の難しさをこう表現した。高血圧や糖尿病などほとんど無症状に進行する生活習慣病は患者が積極的に治療に参加しないかりぎ成功しない。慢性疾患と対峙する医師の最初の大仕事は、患者がドロップアウトしないよう治療の必要性を説得し、納得して治療に参加させることである。

 その気になってコーチの言うことを聞き、真面目に走り出せば多くの患者は完走できる。例えば、高血圧治療で完走することは、脳卒中や心臓病といった生命予後の悪い合併症を起すことなく天寿を全うすることである。

 良い医者は患者をその気にさせる。そして走っている最中に腹痛を起したり、脱水症状が出ないように万全の対策を講じることができる。つまり薬剤による副作用が出ても最小限にとめて患者の完走を助けることができる。良医は慢性疾患、生活習慣病にこそ必要な存在である。

 私が考える良医の必要条件は3つ。

  1. 患者に届く言葉で治療へのモチベーションを高めてくれる医師
  2. 病気による苦痛が患者の人生にどのような影響を及ぼすかを想像できる医師
  3. 生命予後に関わる病気の存在を見のがさず、適切な処置を行い、適切な専門医を紹介できる医師

 良医はゼネラリストである。ゼネラリストが同時に特定の専門領域のスペシャリストであれば理想的だが、ゼネラリストは医学教育だけでは育たない。良医を育てるためには医療環境に関わる厚生行政、医学教育そして賢い医療消費者が必要である。

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私の考える良い医者・良い医療 新着一覧

  • 医者選びは女性が美容師を選ぶのに似ている「自分にとってかけがえのないもの」をあずけられる相手、とは(2009年5月12日)
    医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班 狩生聖子

    久しぶりに実家に帰り、偶然開けた引出しには病院の診察券が山ほど入っている。母親がここ数年、原因不明のしびれで悩んでいる。「あの病院はいいよ」と噂を聞くたびに受診してみるが、なかなか効果が得られないのだという。「A先生がいてくれたら、よかったのに」とぼやいている。数年前まで内科の医師として近くの総合病院に来ていたA医師はとても話しやすく、疑問があったら遠慮なくいえる雰囲気があった。治療方針も明確で、説明もわかりやすく、説得力があり、母はかかりつけ医としてその医師をとても頼りにしていたという。(続きを読む

  • 一人の名医よりも複数の良医、有名病院よりも優良病院(2009年4月16日)
    統合医療福祉中村直行研究室 中村直行

     「良い医者、良い医療とは」と聞かれれば、医療を受ける側か、提供する側かによって返ってくる答えが異なる場合もあるでしょう。また、勤務医か開業医かによっても捉えかたに微妙な温度差が出てくる場合もあります。想定できる範囲で無理やり結論を引き出すと、患者やご家族のお気持ちや視点も理解できて、安全で最良の医療を最小必要限提供し、患者やご家族を安心させることができる医者や医療が、「良い医者、良い医療」ということになるのかもしれません。では、反対にお薦めできない医者とは一体どのような人なのでしょうか。あくまでも主観ですが、箇条書きにしてみましょう。(続きを読む

  • 臨床試験のプラセボ効果は排除の対象。
    しかし、医師の人間力は患者治癒の源泉
    (2009年4月13日)
    医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班デスク 油井富雄

    多くの場合、取材対象となる医師は、「その道の権威」「研究者として業績がある医師」「関係する医学学会で重要な位置にある医師」「肩書きが立派な医師」「コメントを的確に出してくれる医師」「話題となっている医師」……などである。(続きを読む

  • 良医はゼネラリスト(2009年3月25日)
    医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班シニアライター 田野井真緒
  • コミュニケーションの重要性(2009年3月7日)
    医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班記者 西森 聡

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