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他国が注視する日本の年金制度改革。国民への情報開示で、理解促進へ
インタビュー 野村資本市場研究所 研究員 野村亜紀子 氏

2010/06/17
聞き手:日経BP社BPnet編集プロデューサー 阪田英也 取材:21世紀医療フォーラム取材班 原田英子 構成:同 狩生聖子

――これから日本は高齢化社会への変化が非常に速い速度で進み、同時に少子化により、社会保障を支える現役世代の数が減少していきます。このような少子高齢化の中で、公的年金の役割はどのように変化していくのでしょうか。

野村 難しいご質問ですね。というのも、これほど少子高齢化が進んでいる国は世界的に事例が少ないのです。むしろ日本を見て、「日本はどうするの?」と注視されているという立場になってしまった。いわばトップランナーになってしまったところがあります。

年金制度改革の必要性が指摘されていますが、できることは何なのか、絶対欲しいものは何なのか。国民全員がイエスと言うことは無理ですから、総じてみんながイエスといえるような形にする必要があるでしょう。ただ、「言うは易し、行うは難し」ですよね。結局のところ、すべての改革の最大のポイントは、最終形に向かう間のトランジション、つまり、移行です。おそらくまったく白紙のところに年金、という絵を描くような形で年金制度を入れるほうがよほどラクでしょう。

しかし、残念ながら白紙には描けない。すでにもうかなりの数の退職者がいて、現役の方でもそれなりに「将来の年金がこのくらい」と予測しながら人生設計をたてている人たちがいるなかでの制度改革にならざるをえない。ですから最近、改革というのは、ゴールを示すのも大事だけれども、そこまでの過程を示すことが一番、大事かもしれないと思っています。


国民全体で幅広く議論をする必要性が


――一般の人の関心を高めることも必要ですか?


野村 大事ですね。運用に限らず、「年金とはなんぞや」という話のときは、ある程度のディスクロージャーが大事です。ディスクロージャーは今だってしているわけですが、聴衆者が幅広い、言うなれば国民全体であるというときには、誰かがゲートキーパー(例えば新聞・放送などで、ニュースや記事の取捨選択をする担当者)になって情報を提供しないと無理でしょう。その役割はやはり、マスメディアしかないと思います。

――年金制度の改革をする上では制度を決めていくにあたって、各分野からどのような人を集めるかが大事になってきます。

野村 いろんな意見を持つ方が集まる必要はありますが、いずれにしても最低限の情報、知識、そういうものを共有したうえでの違う意見が大事なわけです。また、最終的にはある程度国民全体の支持を得るようなかたちでないといけないので、みんながイエス、ノーというような意思決定、意思表示をするためにも、それこそ国民全体が共通認識、共通の知識というものを持っている必要があります。だからこそ、もっと多くの方にこの問題について関心を持っていただきたいですね。

――最後に、野村さんご自身の今後の研究テーマ、野村ホールディングスの中での、これからの野村資本市場研究所の役割についてお聞かせください。

野村 アメリカからの帰国後に配属された資本市場調査部では、今はほとんど死語となってしまいましたが銀行と証券の「銀証分離」という制度の研究をやっていました。次はまだ日本では目新しかったアメリカの運用業界の調査で、「投資信託」がテーマでした。「アメリカでは、確定拠出というすごい制度があるらしい」「日本には、ないじゃないか」ということで、「確定拠出型年金」から年金の調査の幅が広がっていきました。このように、今後も幅広く、さまざまなジャンルの研究をやっていくことになると思います。

当社では研究員を担当制にはしていません。その分野に詳しい人間は自然にできてきますが、限定されないようにしています。複数で一緒に仕事をする場合も多いので、私自身、若い人と積極的に組んでやらせてもらっています。部署についても、「どこにでもいきます」という姿勢でいます。

研究所そのものの役割ですが、グローバルな金融規制もどんどん動いていき、野村グループもどんどん変化していくのが事実としてあります。そこで一番必要とされている調査は何か、アウトプットは何かということを意識しながら調査をしていくことになると思います。

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