日経メディカルのロゴ画像

日本の医療分野の成長戦略には、「頭脳流入を図る魅力的な環境づくり」と、「縦割り文化を変える」ことが必要

2010/05/24
聞き手:日経BP社BPnet編集プロデューサー 阪田英也、構成:21世紀医療フォーラム取材班 原田英子 通訳:長井聡子

最適なオプションの評価と分析、意思決定のサポート


――エルツェさんが医療分野のコンサルティングを生涯の仕事にしようと思ったきっかけはどんなことだったのでしょうか。

エルツェ 1990年代に、「マネージドケア」や「疾患管理」という概念が出てきて、いかに高騰し続ける医療費を抑えることができるか、医療制度をどのように変革していけばいいかということが話題になりました。私は、若い人がより高齢の人の面倒をみる社会的な契約、国民皆保険制度を通して病気になった人はすべて医療機関にアクセスできるという部分を変えずに医療制度を改革することはできないかということに興味を持ち始めたのです。

この社会契約の部分は絶対に変えるべきではないという強い信念を持っているのですが、もっと市場原理を導入すべきだという人もいますし、特に1990年代にはそれが主流となって、もっと個人に負担をさせるべきだ、自己責任を持たせるべきだといわれていました。

そんなとき、かつては優秀なサイエンティストであった人物が、「私と一緒にコンサルティングの仕事をする」と言ってくれて、チームを組むことができたのが転機です。私自身の理解度の浅い医学や化学、技術に関して、彼が私に教え、手伝ってくれたおかげでいまがあります。

一方、医薬品業界には、知性も教養も高い人が多いということも、私が惹かれた理由の1つ。最終的には、医薬品業界は患者のメリットにつながることをしているので、もっと深く理解したいと思ったことがきっかけです。

――それをコンサルティングというビジネスの形にしていくときのご苦労は。

エルツェ 「カテニオン」という社名に、ブランド力がないことが大変でした。しかも、医薬品業界は非常に閉鎖的であり、クライアントとして一番扱いにくい業種です。しかし、業界全体の知的レベルは高い。そんな中で私たちのチームが成功した要因は、研究開発のリスクの評価について、洗練されたアプローチ方法を開発してきたからだと思います。この分析方法で、プロジェクト・レベルでのリスクの評価を行い、深い理解のもとに意思決定することをコンサルティングしてきました。その結果、リピーターが生まれ、「また、カテニオン社と」と、言ってくれるようになりました。

――現在は、バイエル薬品をはじめ、グラクソ、ファイザーなど多くの競合他社をクライアントにされています。各社の企業秘密を知る立場にいるので、情報管理の面で大変なのでは?

エルツェ もちろん、このビジネスは信頼ありきで、「1に信頼、2に信頼」です。クライアントからは、「わが社のこのチームの仕事をするのなら、同時に別のチームとは仕事をしないでくれ」と要求されます。ですから、情報が漏洩することが1度でもあれば、私の会社は終わりだと肝に銘じています。

しかし、実はそれほどコンフィデンシャルな部分に深く踏み込んでいるわけではありません。それよりも、クラ

イアントの置かれた複雑な環境のもと、いろいろなオプションがある中で、どのようなかたちで意思決定をしていけばいいのか、それぞれのオプションを評価して何が最適なのか、ということの分析、そして意思決定のサポートをしているわけです。

「こういったやり方もありますよ」とか「こっちのほうがいいんじゃないですか」と言うのであって、他の会社は「ああやってますよ、こうやってますよ」と秘密を漏らすことにはなんのメリットもないわけですから。最近の例では、あるプロジェクトが終わって、クライアントに「どうでしたか、私たちの仕事は?」と聞いたところ、「とてもよかったよ。それは、あなた方が意見を持っているから」だと言われました。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ