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“地域による地域のための医療再構築”をめざして、千葉県が「地域医療再生プログラム」を策定

2009/11/25
21世紀医療フォーラム Good Doctor NET編集部 シニアライター 須藤公明

山武長生夷隅地区では、救急医療システムの確立を


また「住民の生命・健康のセーフティーネットとしての救急医療の対応・搬送システムの確立」のモデル地域となる山武長生夷隅医療圏は現在、47万人もの人口をかかえているが、救命救急センターがない。しかも4市2町がそれぞれ自治体病院を運営し、さらに県立東金病院が立地しているものの、救急搬送に30分以上かかる割合が80%近くに上り、管外搬送率は40%、重症患者搬送の4件に1件は1時間以上かかるという状況になっている。すでに高齢化率は24%に達しているだけに、今後さらに事態が悪化すると予想される。

このような事態を改善するために、千葉県が打ち出したのが、3次救急病院としての九十九里地域医療センター(仮称)の建設である。これを救急医療、災害時対応医療、周産期医療、小児医療を担当する地域医療の中核病院として位置づけ、314の病床のうち20を併設する救命救急センターに設置するというものだ。また、交通事情などを考慮してヘリポートも併設し、2013年(平成25年)に開院する予定だ。ここはまた、千葉大学医学部と密接に連携して臨床研修指定病院ともなる。

九十九里地域医療センター(仮称)が完成することによって、救急医療の中核が出現することになり、現在、救急医療の対応に忙殺され、疲弊している医療機関の状態を改善することが期待できる。その一方で、成東病院や長生病院、いすみ医療センターの救急機能を強化し、救急医療コーディネートシステムを構築しつつ、開業医の2次救急医療への参加も推進する。また、現在は0人の救急専門医を千葉大学との連携によって20人配置し、高度救急医療に対応できるように支援する。

さらに、この地域には回復期リハビリテーション病床が整備されていないという問題も指摘されているが、千葉県では「人口10万人当たり50床という全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会の設定する目標を整備する」とし、それによって患者の速やかな機能回復、社会復帰への支援を行うことにしている。このように様々な策を講じることによって、圏外への救急搬送率を10%に、救急搬送に30分以上かかる割合を45%に引き下げ、「三重苦にある」といわれる山武長生夷隅医療圏の救急医療体制を再生する。

「地域医療連携パス」の推進で、医療システムを変える


千葉県は現在、人口10万人当たりの病院病床数は約931床と全国で45番目、人口10万人当たりの医師数も約153人と全国で45番目という状況。救急隊による医療機関への患者収容時間も年々長時間化している。今回、策定した地域医療再生プログラムは、医療機関それぞれの役割分担と連携強化をテコに、従来の路線とは全く違う形で効率向上を目指すものだが、医師ら医療関係者の養成・確保のほか、IT(情報技術)の活用や医療関係者と行政、市民の信頼構築などに踏み込んでいるのも大きな特徴と言える。

医療機関にも患者にもメリットのあるツールのひとつに、急性期から回復期、在宅までをつなぐ「千葉県共用地域医療連携パス」がある。すでに全国に先駆けて4疾病についてパスを作成、配布を開始したが、これを利用することによって、医療機関と患者が情報を共有できる。同時に、医療現場ではプライマリーケアと専門医療の役割分担が推進され、全体的な効率化を図ることができる。一方、患者にとっては状況に応じた適切な医療の提供を受けられるというメリットがある。

医療情報については、検査や画像診断などのデータを交換できるシステムを整備するため「千葉県医療ネットワークセンター(仮称)」を計画しているほか、診療所や地域連携病院が拠点病院や大学病院から専門的な助言を受けられる体制を築く「専門医助言システム」の構築も予定している。また、医療関係者、行政、住民が参加するシンポジウムの開催をはじめ、印刷媒体や電波媒体、さらにインターネットを利用した情報の発信や交換にも取り組み、相互の信頼性を確立する方針を打ち出している。

地域医療の崩壊、救急医療の崩壊を食い止め、それらを再生するのは、医療関係者の努力だけでできるものではない。病院を建設すれば事足りるというわけでもない。医療関係者と行政や住民との協働作業が不可欠になる。その意味で、医療機関の役割分担と連携強化という効率運用のためのソフトウエアを重視し、住民にも情報を公開するとともに参加を要請する千葉県の地域医療再生プログラムは、21世紀型の医療体制を構築するための大きな試みとして、その推進、実現が待ち望まれる。

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