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特別インタビュー「治験・臨床研究の活性化に向けた戦略をどう描くか」

2009/07/22
国立病院機構大阪医療センター院長 楠岡英雄 氏

―地域差があると思いますが、中核・拠点病院と、地元の医師会との関係も重要ではないでしょうか。 楠岡 大阪の場合は、医師会が「治験促進」の立場を取っていますので、やりやすかったという面があります。ただ、ネットワークづくりの前には、大阪府医師会と地元の医師会に説明に行って、了解を得ています。もしも医師会に断りなく、ネットワークづくりをすると、地域によっては医師会からの反発を招くこともあるかも知れません。「治験に名を借りた患者集めではないか」という反発が考えられます。あとは、治験の領域や関連する診療科によっても、ネットワークのつくり方が違ってくるでしょう。結局は、その地域に合ったやり方を中核・拠点病院が模索し、やっていくしかないでしょうね。

医師、コメディカルへのインセンティブの仕組みを

―治験活性化の取り組みの中で、1つのハイライトと見られるのが、治験と患者さんの橋渡しをするCRC(治験コーディネーター)の養成です。この点は、いかがですか。

図5:治験・臨床研究の関係者の役割と活性化目標のポイント

楠岡 「3カ年計画」の時代に、約4500人のCRCが養成されました(2005年度末実績)。ただ、これは大学関係、看護協会、薬剤師研修センターなどに設置された養成コースを修了した人の数です。当初の3カ年計画では、5000人養成する計画でしたから、数の上では、ほぼ目標を達成しています。

ただ、コースを修了した人が実際にCRCの業務に就いているかというと、そうでもないのです。調査の結果、現場の仕事に就いているのは、せいぜい半分程度で、約2000人という結果が出ました。中には業務に就いていたのだけれども、その後、現場を離れたというケースも結構ありました。偉くなって現場を離れた人もいるし、病院に治験の依頼が来なくなって、業務を続けられなくなったという人もいた。

そこで、5カ年計画では、CRCの実働確保という目標を掲げています。人材関連では、治験・臨床研究にたずさわる医師の技能向上や生物統計家、データマネージャーの養成なども、大きな課題です(図5)。

―病院の経営面から見ると、治験・臨床研究というのは、ある程度、経営に余裕がないと積極的に実施するのは難しいと思うのですが。

楠岡 治験・臨床研究にたずさわる医師は、一般診療とは別の形でプラスアルファの業務をすることになるので、病院によっては、ムダだという考え方をする人がいるのも理解できます。例えば1時間に何人の患者さんを診られるかというと、一般診療だと1人5分だとして、1時間で12人診られる。その点、治験の診療は5分ではとても無理です。CRCの方などにサポートしてもらったとしても、1時間当たりの診療人数は、一般診療よりは、どうしても減ってしまいますね。また、治験は、入院の患者さんよりも、外来の患者さんを対象にすることが多いので、その面でも、効率が悪いというところはあります。

―ただ、中核・拠点病院になれば、政府から補助金が出て、そこをサポートしてくれるのでは。

楠岡 10年前から比べると、治験に対して、2~3倍くらいのお金の手当はあります。さらに、CRCの費用も、企業が負担するケースもある。ですから、治験に関しては、何とか手当ができている。問題は、臨床研究です。これについては、研究そのものの費用はある程度、出ていても、医師が臨床研究にたずさわることによって、診る患者さんの数が減っている部分は、病院が何とか工面するしかないのです。

ですから、その部分では、病院トップが腹をくくってやっていくしかない。ただ、治験・臨床研究ができる環境をつくれば、その病院を希望する医師も増えるのは確かです。治験・臨床研究をやってみたいという医師も多いので、優秀な医師を集める助けになるかも知れない。そこを病院のメリットと見るかどうかですね。

―治験や臨床研究のできる病院は、一般の病院に比べて、医療レベルが高いとも言えるのではありませんか。

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