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特別インタビュー「治験・臨床研究の活性化に向けた戦略をどう描くか」

2009/07/22
国立病院機構大阪医療センター院長 楠岡英雄 氏

表1:治験中核病院・拠点医療機関一覧

一方、拠点医療機関に関しては、今回の5カ年計画が始まる前に公募し、従来の治験実績のほかいくつかの基準で判断し、選びました(表1)。もともと47都道府県に対して拠点医療機関が30ですから、各県1つのような配分にはなっていません。首都圏、関西圏に集中する傾向があります。というのも、やはり治験には症例集積性が必要ですから、どうしても人口の密集地が有利ということになります。

今年は、5カ年計画の3年目ですから、中核・拠点病院に関しても、中間見直しをする予定です。現在、スタート前と1年目、2年目のデータが集まってきていますから、それを精査して、目標に達していない病院があれば、入れ替えも考えていく。入れ替えをするかどうか、あるいはどういう形で入れ替えるかは、これから検討会を作って考えます。

入れ替えるとしたら、もう一度、全国に公募し、いま中核・拠点病院になっているところよりも実績的に上のところがあれば、入れ替えるような形になると思います。サッカーでいうと、J1とJ2の入れ替え戦のようなものをやっていきたいと考えています。

―なかなか厳しいですね。入れ替えの際の基準などについてはいかがですか。

楠岡 年間の治験数、症例数が基本です。さらに製薬企業から引き受けた治験を、実際に何パーセント、きちんとこなしたのかも見ます。さらに今回は、治験の迅速性も加味しようと思っています。ただ、この2年間を見ていると、治験の活性化は、それほど顕著には進んでいません。中核・拠点病院を中心としたネットワークづくりが、なぜうまく機能していないのかについても、検討会の中で考えていきます。

―例えば、先生の所属する大阪医療センターがハブになる場合、治験ネットワークとして協力し合う病院、診療所との関係は、どういうイメージになのでしょうか。

楠岡 大阪医療センターでは、いま主に2つのネットワーク治験が動いています。1つは肝臓の治療薬であるインターフェロンの治験、もう1つは乳がんの抗がん剤の治験です。インターフェロンの治験では、肝炎や肝硬変の患者さんに、治験に参加してもらわなければなりません。当センター周辺の開業医が、肝臓疾患を日頃から診ていることが多く、地域の診療所との連携が大事です。

具体的には、普段から検査などで大阪医療センターを使っていただいている開業医に情報提供し、いま実施している治験に関連する患者さんを送っていただく。実際、インターフェロンの場合は、患者さんにもメリットが大きいのです。インターフェロンは高額な薬ですが、治験に参加すると、その治療が無料で受けられる。そのため、患者さんが比較的集まりやすいという面があります。

―病診連携の場合、診療所から患者さんを病院に送ると、帰って来ないのではないかという気持ちが、診療所を持つ開業医の中にあるようですね。

楠岡 そういう危惧があると思うので、治験期間が終わったら、紹介元の開業医にきちんと患者さんを返すことを徹底しています。もともと、インターフェロンの場合は病診連携がうまくいっている開業医に案内を出していますし、治験期間中も完全にお預かりするのではなく、治験に必要な週1回あるいは月1回の治療以外は、診療所の先生にお返しして、フォローアップしてもらうようにしています。

一方、乳がんの場合は、診療所というよりも、地域の小さな病院との病病連携が中心になります。乳がんの初期の治療とか、手術の方法などは確立されてきているので、小さい病院でも専門医の方が手術までやるケースが多い。そういう病院にお願いして、ローカルなネットワークを作り、術後の化学療法剤の治験を行っています。

いずれにしても、ネットワークをつくる際に大事なのは、お互いの信頼感です。診療所、地域の病院からすれば、送った患者さんが、ちゃんと帰ってくるかどうかが重大です。また、治験の場合は、自分がいままで診ていた患者さんを、ある意味でリスクにさらすことになるので、治験する側の病院ではきちんとした対応を心がけなければなりません。

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