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特別インタビュー「治験・臨床研究の活性化に向けた戦略をどう描くか」

2009/07/22
国立病院機構大阪医療センター院長 楠岡英雄 氏

図4:新たな治験活性化5カ年計画の目標として

例えば、米国の場合、治験というのは、一般の人がレベルの高い医療を受ける大きなチャンスとなっています。高度な医療になればなるほど医療費が高額になるので、治療を受けた時に、その一部でも治験に参加する形にすれば、そのぶん医療費が軽減されるというメリットが大きい。また、イギリスの場合は、家庭医制度があって、専門医にかかるのは、時間的にも、費用的にも大変です。長く待たされるし、お金もかかるわけですね。その点、治験に協力すれば、非常にスムーズに、安く専門医にかかれます。

日本の場合も、治験に参加すれば、待合室で長時間待たずに診察が受けられる場合もありますし、費用も抑えられます。しかし、医療機関へのフリーアクセスが保証され、国民皆保険で医療費の自己負担も比較的少ない日本では、治験に協力するメリットが、欧米各国よりも小さく感じられるのかも知れませんね。 ―アジアでも、例えば韓国では、大規模な治験センターのような病院があり、治験がスムーズに進むそうですね。

楠岡 韓国の場合、国内に10カ所くらい、ものすごく規模の大きい病院があります。ベッド数が2000床もあって、1日の外来患者が3000人も4000人も集まるような巨大病院があって、そこに治験を依頼すると、必要な患者さんを、1つの病院で1日に20~30人も簡単に集められる。そのため、政府がそうした大病院に援助もして、治験のコストも時間も大きく節約できる体制を作りました。

一方、日本には、それほど巨大な医療機関はありません。1つの医療機関で登録できる患者さんが少ないので、一定数の患者さんを集めようと思うと、極端な場合、全国の病院にお願いしなければならないような状況になります。治験の中には、モニタリングといって、治験を依頼する製薬企業の関連スタッフが、治験がちゃんと進んでいるかどうかをチェックする作業が義務づけられています。治験の病院が全国に散らばっていると、このモニタリングの作業も、ものすごく効率が悪くなってくる。ですから、日本の場合は、大規模な治験センターの代わりに、地域の中核・拠点病院をハブとし、近隣の病院、診療所を集めてネットワークを作るという考え方で、治験ネットワーク体制を構築することにしたのです。

周辺の病院、診療所は、治験に該当すると思われる患者さんを、一時的に中核・拠点病院に紹介し、治験は、その中核・拠点病院で行う。そうした地域ネットワークの中で、多数の患者さんを集めることで、韓国などにある程度は、太刀打ちできる仕組みができるのではないかと考えたわけです。いうなれば、バーチャルな治験センターを、地域ごとにつくっていく。それが、今回の5カ年計画で、3カ年計画を引き継ぐ形で、力を入れている取り組みの1つです(図4)。

病診連携、病病連携の努力がネットワークを支える

――そのハブになる中核・拠点病院は、全国にどのくらいあるのですか。また、規模や機能などの面で、どんな条件があるのでしょうか。

楠岡 厚労省が、全国で中核病院を10カ所、拠点医療機関を30カ所選んで、補助金を出している状況です。選定の際に、特別はっきりした基準は定めていないのですが、中核病院は、規模の大きい国立高度医療センターや大学病院が中心です。

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