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特別インタビュー「治験・臨床研究の活性化に向けた戦略をどう描くか」

2009/07/22
国立病院機構大阪医療センター院長 楠岡英雄 氏

国立病院機構大阪医療センター院長 楠岡英雄 氏

その国の医療レベルを決定づける大きな要素の1つに治験・臨床研究(※)がある。最先端の治療への患者アクセスを確保し、将来的に世界トップクラスの医療レベルを維持するためには、薬づくりにおいて重要なプロセスである「治験」と、薬を臨床でどう使うかを研究する「臨床研究」の活性化が不可欠だ。
しかし、日本では1990年代後半から治験数が目立って減少している。また、臨床研究の活動レベル低下も懸念されている。この状況を改善し、治験・臨床研究を活性化していくには、どうすればよいのだろうか。
3回の短期連載の形で、活性化への提言と現場での試みをレポートする。第1回は、政府による「治験活性化計画」の策定に早くから関わり、活性化のためのさまざまな提言を行っている楠岡英雄氏(国立病院機構大阪医療センター院長)に、これまでの治験活性化計画の経緯、日本における治験・臨床研究の問題点、さらに今後の治験・臨床研究の活性化のための戦略について聞いた。

(聞き手:日経BPクロスメディア本部プロデューサー 阪田英也 構成:21世紀医療フォーラム取材班 編集長 桶谷仁志)

図1:臨床研究、臨床試験と治験

※治験・臨床研究
市民・患者の協力を得て、薬の有効性と安全性を調べることを「臨床試験」という。中でも新薬の承認、認可のために行う臨床試験を「治験」と呼ぶ。治験には3つの段階(相=フェーズ)があり、第Ⅰ相試験では健康人・患者を対象にして、安全性と薬物動態を調べる。第Ⅱ~Ⅲ相試験では、該当の患者を対象に、治療を兼ねた有効性、安全性の試験を行う。このほか、医薬品の市販後に実施する治験を第Ⅳ相試験と呼ぶことがある。「臨床研究」は、臨床試験よりもさらに幅広く、病気の原因の解明、病気の予防・診断・治療の改善、患者の生活の質の向上などを目的に、主に大学病院の医師などが行う医学研究を指す。この臨床研究が基本になって、臨床試験、治験も実施されるのが望ましいので、治験の活性化のためには、臨床研究の活性化が不可欠だとされている。「臨床研究」「臨床試験」「治験」の関係は図1を参照。

創薬=薬づくりは将来の日本の屋台骨を支える

―日本では、1997年に公布され、翌98年から施行されたGCP省令(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)によって、治験数が大きく落ち込んだとされます。同省令によって、外国で実施された臨床試験データの受け入れが可能になったことから、欧米で治験を実施するケースが増え、日本国内での治験が“空洞化”したと見られていますが。

楠岡 当時、治験数が減ったのは、GCP省令とは別の要素もあったことを、ここで一応、注意しておく必要があるでしょうね。というのは、治験数のグラフ(図2)を見ていただけるとわかりますが、GCP(臨床試験の実施基準)が変わる以前から、治験数は大きく減り始めているのです。

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