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医療再生は人づくりから~「効果的、効率的、魅力的」な医学教育のあり方を探る

2009/07/20
21世紀医療フォーラム取材班シニアライター 田野井真緒

図2 「真剣勝負」のトレーニングを真剣に行うには、リアルな場が必要

学習は、学習者の中にしか起こらない



<p> では、池上氏らは、医療現場のニーズに応えられるような人材をどのような方法で育成しようというのだろうか。「効果的に」「効率的に」そして「魅力的に」行うことが必要なのだと、池上氏は言う。</p>

<p>「僕らの学習観は、学習は学習する者の中にしか起こらないというのが基本。学習者が効果的に学び、効率よく修得できるようにするためには魅力的だと感じられる教育が必要だ」。</p>

<p> 効果的に学ぶためには、目的を定めて、目的にいたるプロセスが適切に設計された教材を使い、学習者の心の動きや状況を見ながら、プログラムを進行していく優れたファシリテーターが必要。ファシリテーターを育てるのも日本医療教授システム学会の重要なミッションだ。</p>

<p>「よい教材を使えば、通常4時間で教える内容も30分に短縮することができる」と、池上氏。</p>

<p> 効率的な学習方法の1つはシミュレーション教育・訓練だが、シミュレーション教育・訓練ではリアリティが求められる。学習者が臨床の臨場感を感じられなければ有効なシミュレーション訓練はできない。すなわち、シミュレーション訓練では、現実に遭遇する病態をシナリオ化して、学習する者が緊張感を保ち続けられるようにしなければならない。</p>

表2 シミュレーションの5要素

 そして魅力的な学習とは、学習者が参加して楽しかった、と思えるような教材と学習内容である。学習時間が長いと感じてしまうような内容では魅力的な学習とはいえないのだ。

「この3つが揃うと、20年で達成された目標が10年で達成できる」(池上氏)。日本医療教授システム学会は、大きく大別して、効果的に学べる教材の開発、優れたファシリテーターの育成、効率的な学習方法としてシミュレーション教育の普及、魅力的な学習方法の開発をミッションとしている。

1つのきっかけで、シミュレーション教育が一気に普及する可能性

 昨年12月、全国から研修医たちによるシミュレーション甲子園が開催された。ここで池上氏が感じたことは「参加した研修医たちの反応、指導医の熱意から、これは魅力的なイベントになる」だった。たとえば、1チーム3名の各地から選抜された30チームくらいが1泊2日で、シナリオに添ったシミュレーションを行い、それぞれの能力を競うような大会ができれば、その経験は参加者の心に刻まれ、シミュレーション訓練が医師になるために必須の要素であることを理解するだろう。あるいは高度なシミュレーターと人による患者役を配することでよりリアルな訓練も可能になる。

 この大会を大きく育てることによってシミュレーション訓練が実際の臨床場面で生きることを、医学生、研修医さらには医学教育に携わる医療人が感じられるようになる。「研修医だけでなく、夏休みを利用した医学生向けの大会、さらには看護師向けの大会も企画したい」と池上氏。

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