日経メディカルのロゴ画像

医療の質と安全を担保するシミュレーション教育

2009/06/15
21世紀フォーラム取材班シニアライター 田野井真緒

 今後もそのような教育がなくなることはない。これがなくなれば次世代の医師、看護師を育てることができなくなり、新しい医療技術が生み出されなくなる。しかし、精巧なシミュレーターが開発されて、初めての患者に、ある医療行為を行う前にシミュレーターにより十分練習を積むことが可能になった。

 中西氏によれば、「シミュレーターによる練習はリアリティが重要。リアリティのないシミュレーション教育はあまり意味がない」。ところが、シミュレーターを持っている施設の多くは血管確保、腰椎穿刺、縫合、動脈採血、エコー、挿管、中心静脈ライン挿入など基本的な技術を学ぶ場になってしまい、リアリティのあるシミュレーション教育が行なわれてない。

 最も教育的効果が高いシミュレーション教育は、実際に遭遇する病態(腎透析中の心血管事故、脳卒中を疑わせる患者が来院したときの適切な診断と対処法など)を想定した教育である。

 たとえば、パイロットは乗客を乗せてフライトする前に、フライト中に起こりうる不測の事態を想定したシミュレーション教育を受け、一人前のパイロットになってからも操縦技術の衰えを防ぐために定期的にシミュレーション教育を受けるが、医療においても、そのようなシミュレーション教育が必要である。

シミュレーション・ラボで何ができるか

虎の門病院梶ケ谷分院のシミュレーション・ラボ

 リアリティをもったシミュレーション教育を実践するためには、常駐の管理者を置いたシミュレーションセンターが必要である。

 虎の門病院梶ケ谷分院には、AVルーム、学習室、各種シミュレーター(模型)、複合シミュレーション(模擬ICU、病棟)、コンピューターソフトなどを備えたシミュレーション・ラボがある。これは国家公務員共済組合連合会傘下の34施設によって組織される共済医学会の事業として3年前から運営され、虎の門病院が実務を委託されたもの。

 ここでは定期的に新人医師、看護師、コメディカルを対象にした標準的、医療技術のシミュレーション教育が行なわれ、さらに過去に生じた事例によるシミュレーション研修などが実施される。これにより、1人の医師が経験した事例を研修に参加した人が共有でき、次の事例に活用することができる。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ