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緊急提言 「臓器移植法改正に国民的議論を~いま問われる日本人の倫理観」

2009/05/29
大阪大学副学長 病院担当 門田守人(21世紀医療フォーラム代表世話人)

 今国会に提出されている臓器移植法改正案をめぐり、A、B、C、Dの4案(下記参照)が錯綜している。A、B両案は06年提出、C案は07年、D案が自民党・根本匠、民主党・笠浩史両衆院議員が新たに提出した法案だ。C案を除く3案は、いずれも臓器移植を推進する目的で、移植の要件のいずれかを緩和することがその主旨である。(C案は「脳死判定」基準を厳格化)
与党・自民党は今国会会期中の本会議で4案をそれぞれ採決する予定だが、いずれの案も出席議員の過半数を獲得する見込みは薄く、すべての案が廃案となる可能性がある。
この臓器移植法改正案について、これまでの議論、臓器移植の実態、そして日本人としてもつべき倫理観などの観点から、大阪大学副学長で外科医でもある門田守人氏は、警鐘を鳴らす。

(取材:日経BPクロスメディア本部プロデューサー 阪田英也)

大阪大学副学長 病院担当 門田守人 氏

臓器移植法は、12年前の1997年に成立。臓器移植が可能となる5つの要件を次のように定めました。

「脳死は『人の死』か」 ⇒ 臓器提供の場合に限定
「提供条件」      ⇒ 本人の書面の意思表示と家族の承諾
「提供年齢」      ⇒ 意思表示が有効な15歳以上のみ
「脳死判定」      ⇒ 自発呼吸や瞳孔の大きさ、脳波など6基準で判断
「親族への優先提供」  ⇒ 認めず

 この法律は、長い議論の経緯を経て成立・施行したもので、当初は施行後3年で見直すことになっていました。しかし、1997年から11年半の歳月が過ぎるまで見直されることはなく、現在に至っています。

臓器移植法ではなく、「移植禁止法」

 この法律は、臓器移植について世界に類を見ないような厳しい制限を設けており、当時移植関係者からは、移植法というより「移植禁止法」とでもいうべきであると揶揄されていました。

 予想されたように、残念ながらこれまでに「脳死」で臓器提供に至った件数は、わずか81に留まっています。しかも15歳未満の者からの臓器提供は認められていません。

 その結果、成人の臓器の一部分での移植でも機能を発揮できる肝臓移植は別として、臓器全体としてしか移植できない心臓移植では、小児患者の場合、国内では移植することができず、海外渡航して移植するしか道は残されていないのです。

 そして、現在までに130名を超える患者が渡航して心臓移植を受け、そのうちの42名が9歳以下の小児患者であることが公表されています。

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