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医療クラーク養成のフロント・ランナー、病院関係者が注目する京都医療センターの試み
「スペシャル医療クラーク」誕生

2009/05/21
医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班シニアライター 田野井真緒

真剣な表情で安井医師と打ち合わせをする井上さん

日本の医療を変える「スペシャル医療クラーク」

 「スペシャル医療クラーク」が実際の業務についてまだ1カ月足らず。その仕事を評価するには早すぎるが、藤井病院長は2人の医療クラークに大いに期待している。

 病院長として赴任してから2年間で赤字経営だった病院を黒字経営にした。そのためには病院職員の協力が欠かせなかった。「どうしたら職員が精いっぱい働ける環境をつくれるだろうか」。国立病院機構の職員の身分は国家公務員。病院長の裁量だけで給料を上げることはできない。考え抜いて出した結論の一つが医療クラークだった。

「家庭の事情などで医療の現場から離れた人でも、医療クラークなら復帰できる。医療クラークには雇用創出という面もあります」。

 藤井病院長は、「スペシャル医療クラーク」に高度な仕事内容を求めている。事務作業を代行するだけでも医師の負担はかなり減るが、それだけでなく、専門性を発揮しやすいように、医師の仕事をマネジメントするような役割も期待している。

 診療科に配置された医療クラークがOJTで仕事を覚え、その診療科にとって不可欠な人材に育てば、医師は専門職としてのパフォーマンスを100%発揮できるようになる。診療密度も高まって、医師と患者が会話する時間も増えるだろう。

「私たちの試みはひとつの実験です。この試みが成功すれば保険診療の範囲内でもこれだけのことができるという証明になる」。藤井病院長は、医療クラーク制度を突破口にして、日本の医療を変えたいと考えている。

 「人を育てるのは難しいが、トップがこういう人間像を期待しているという高い理想を求めて、職員がその理想に向かって努力することが重要だ。お互いの団結心を養いながら、少しでも高いレベルの人材を育て、日本の医療はこういう風に変わるということを示したい」。

 藤井病院長が、「スペシャル医療クラーク」を自前で養成することを発表すると、多くの医療関係者から「ぜひ成功してほしい」と激励された。病院関係者は、京都医療センターの「スペシャル医療クラーク」に熱い視線を送っている。

注)
国立病院機構
全国145病院を1つの法人として運営し、がん、循環器病、重症心身障害など国民の関心が高い疾患について、国内最大の医療ネットワークを形成し、地域のニーズにあった医療を提供する。近畿ブロックには20の機構病院があり、それぞれの機構病院と地域の中核病院、かかりつけ医などの各医療機関が「機能分担」を行っている。

「スペシャル医療クラーク」
 高度な専門教育を受けた医療クラークで、専門性に見合った待遇を保証されている。医師の事務作業を補助する秘書的な役割以外にも、医師─患者間のパイプ役としても期待されている。「スペシャル医療クラーク」は京都医療センター独自の名称。

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