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医療クラーク養成のフロント・ランナー、病院関係者が注目する京都医療センターの試み
「スペシャル医療クラーク」誕生

2009/05/21
医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班シニアライター 田野井真緒

スペシャル医療クラーク導入を決めた藤井信吾・病院長

 育成コースが修了すると、認定試験を行った後、京都医療センターで雇用されることになる。年収は勤務時間などにもよるが280~400万円程度という。「スペシャル医療クラーク」は、医療情報部に籍を置き、そこから本人の希望や必要度を勘案してそれぞれの診療科で働くことになる。国立病院機構の職員には定員があるので、「正規職員として採用したいのだが」(藤井信吾病院長)、身分は非常勤職員。8時30分から17時15分までの6時間程度の勤務なので、結婚して家庭に入った看護師や病院薬剤師の経験がある人に向いているかもしれない。

 問題は人件費である。2008年の診療報酬改定で「医師の事務作業補助体制加算」として、医療クラークは100床当たり105点、50床対1で185点加算となったが、600床の京都医療センターで50人の医療クラークを採用したら、新設点数だけではとても足りない。

 1人当たり400万円の年収と見積もった場合、新たに2億円の人件費が必要になるからだ。その費用はどのようにして捻出するつもりだろうか。

 職員に医療クラーク導入の重要性を説き、医師らに協力を求めた藤井病院長は、入院患者1人につき5万円の収益があれば1日1人入院患者を増やすことによって5人の医療クラークを雇用できると試算。50人の雇用には1日10人の入院患者を増やせばよいと考えている。

 藤井病院長の目論見は見事に当たったといえる。「医療クラークを導入した4月以降、ベッド稼働率が非常によくなった」からだ。現在、600床のベッド稼働率は95%と高い。

「なぜかわかりませんが・・・」と藤井病院長は笑うが、医療クラーク導入を決めたときから、診療の質を高めることを理解した医療スタッフの努力によるところが大きい。効率的で質の高い診療をすべての職員が心がけた結果である。

「スペシャル医療クラーク」導入で、退院サマリー作成率が向上

 「スペシャル医療クラーク」導入の成果も現れた。退院サマリーの処理が格段に早くなったのである。

 患者が退院すると、医師は入院から退院までの経過・治療内容を要約し、最終診断名と転帰が記載された書類を作らなければならない。この退院サマリーは、患者記録を残し、退院後の外来診療を円滑に行うために作成される。

松田さんが配属された産婦人科でも退院サマリー作成率が向上した

 一般に病院の大小を問わず退院サマリーの退院早期の作成率は低く、診療録管理部門の悩みの種になっている。退院サマリーは主治医以外の医師、患者、病院管理者、公的機関に対して医療の透明性を確保し、行なわれた医療行為の正当性を保証する基本資料だが、8時30分からはじまる外来診療が午後2時、3時までかかることも珍しくない医師に退院サマリーを書く時間はわずかしかない。退院サマリーよりも優先すべき仕事が多いのでつい先送りされる。重要であることはわかっていても医師にとって気が重い仕事である。

 そこで京都医療センターでは、退院サマリー作成率の低い診療科を中心に、「スペシャル医療クラーク」を配置するようにしているが、松田さん(産婦人科)と井上さん(腫瘍内科)が書くようになって2週間。60~100冊もたまっていた退院サマリーがたった数冊に減った。

「診療科の先生が電子カルテなどの入力に必死になっている後ろ姿を見て、私がお手伝いすることで、先生が本来の専門性を発揮する機会が増えれば、患者さんにとってもメリットが大きいと思った」。 左袖の肩口にSpecial Medical Clerkと刺繍の入った、真新しい制服に身を包んだ松田さんは語る。

 医師に代わって書類を作成することが効率的な診察につながり、結果的に待ち時間が少なくなって、「患者さんに喜ばれるようになりたい」と語る松田さんは、若い看護師から助産師としての経験を生かしたアドバイスを求められることもある。医療クラークとしての経験は浅いが、即戦力として頼りにされる存在である。

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