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医療を“輸出産業”に育成しよう

2010/06/28
医療ライター 須藤公明

「医療ツーリズム」をめぐる議論が活発になり、本格的なビジネス展開に取り組む動きも目立ってきた。この根底には、医療の国際化が勢いを増すとともに、「よりよい医療」を求め、国境を越える人が増え続けていることがある。行政では経済産業省などが様々な策を講じようとしているし、企業では旅行会社のJTBが専門組織「ジャパン・メディカル&ヘルスツーリズムセンター」を設置した。医療機関でも、人間ドックでの健診をはじめ、外国人のニーズに対応するメニュー開発に乗り出したところがある。

そこで、問題は、地域医療の崩壊、医師不足など様々な問題が指摘される日本の医療に、国際的な競争力があるかどうかだ。ただ、かつての輸出産業であった繊維や電機がそうであったように、すべてのメーカーが、強い競争力を持たなければならないわけではない。海外に進出するとこもろもあれば、国内を深耕するところもあっていい。しかも、「医療ツーリズム」も現在の段階では、外国人に「医療・健診サービス」を提供するとはいうものの、その場所は海外ではなく、国内なのである。

先日、日本投資銀行がとりまとめた予測が注目されている。「10年後の2020年には、医療ツーリズムの市場規模は約5500億円になる」としたものである。その内容を紹介すれば、「来日が見込まれるのは、中国などの新興国の富裕層、米国などの割安な医療を希望する人々、そして国籍を問わず最先端の医療を求める人々で、年間43万人程度」としている。さらに「健診に758億円、ローコスト医療に923億円程度が見込まれる」という試算結果になっている。

もとより、外国人に本格的に医療サービスを提供しようとすれば、様々なカベが予想される。言葉や習慣、保険やビザの問題などである。それらは1つ1つ解決していくしかない。ただ、医師や各種診断装置の技術者、看護師などは、必要とあれば外国人を雇用できるようにすればいい。彼等を手本とし、そのノウハウを日本人のスタッフが身に付ければ、競争力の強化につながるだろう。また、規制緩和の意味では、「健診サービス」をリゾートなどと組み合わせ、地域振興に役立てる特区の創設も有望だろう。

話は逸れるが、WEOY(ワールド・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー)という、毎年モナコで開催される世界的な起業家の表彰制度がある。アーンスト・アンド・ヤングが主催するもので、今年のシンガポールの代表は、医師800人を含め従業員が7000人、世界70カ国で医療・救急サービスを提供している事業を興した人だった。この企業、インターナショナルSOSの詳細な事業内容は不明だが、すでにアジアにも世界を舞台とする医療機関が登場し、活躍しているわけである。

政治、経済、社会…現在、いろいろな分野でグローバル化が進んでいる。グローバリゼーションというか国際化には、人、物、金という3要素のすべてにわたって、出て行くもの、つまり輸出と、受け入れるもの、つまり輸入がある。サービス関連では、外食産業に輸入から輸出へと切り替わる兆しが窺える。日本にとってモノづくりは非常に大切だが、モノからサービスへという社会の流れに乗り、医療ではまず外国人を呼び込める質の高いシステムを確立し、次に輸出産業に育てていく施策が不可欠になっている。

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