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事業仕分けと医療制度

2009/12/02
医療ライター 須藤公明

透明で公正な医療予算を


11月の初めから末まで、政府の行政刷新会議の下で断続的に行われた「事業仕分け」は、国民の高い関心を集めた。政治家、有識者らで構成するメンバーが行政の専門家を相手に予算要求の根拠や目的を問い質して「無駄遣いを洗い出す」という斬新な手法、そして財政健全化を目指す一助に「3兆円は削減したい」とした目標の達成度合いなどが、注目されるところとなった。その模様がテレビやネットで中継されたことも、このイベントの話題増幅に一役買ったことは否定できないだろう。

「事業仕分け」という手法の是非についてはいろいろ意見があろうが、その議論はさておき、今後の医療問題を考える上で無視できない数々の指摘がなされた。確認のために主立った結果を列挙すれば、「レセプトオンライン導入のための機器の整備導入(215億円)」は「予算計上見送り」に、「医師確保や緊急・周産期対策の補助金など(573億円)」は「30%以上の縮減」に、「診療報酬の配分(9兆3612億円)は「見直し・その他」という扱いになった。また、介護予防事業(200億円)なども俎上にのせられた。

ここで、それぞれの事業の「仕分け」議論を振り返り、その内容を吟味している紙数はない。ただ、総じて言えるのは「事業が透明で公正なものであるかどうか」、それを前提として「筋道が通り、分かりやすい仕組みになっているかどうか」について、疑義が多々あったということだ。別の言い方をすれば、世の中ではアカウンタビリティーつまり説明責任が強く求められているが、「予算計上見送り」という結果からは、行政はその責任を十分には果たし得なかったものと理解される。

行政の事業である以上は「透明性」と「公平性」は不可欠の要件であるといっていい。それらを満たす上で必要なことは、費用対効果を極力正確に把握すること、そして負担と受益のバランスに的確な配慮がなされていること、となる。「30%以上の縮減」とされた詳細は不明だが、そういう判定に落ち着いた根底には、社会的に事業としての必要性は認識されるものの、費用対効果などの計算が甘過ぎた、いわゆる「お役所仕事」的あるいは「ドンブリ勘定」的な面は否めないと判断された結果だろう。

いかに財政が危機的な状況にあるとはいえ、重箱の隅をつつくようにして行政の非をあげつらうのが目的ではない。「事業仕分け」にしても、日本を明るく豊かな、健やかに暮らせる社会にすることが本当の目的のはずだ。そこで、医療関係だけではなく様々な分野で、行政サービスの質を上げ、同時にコストダウンを徹底することが緊急の課題になっているわけである。医療でいえば、医師確保や緊急・周産期対策を早急に実施しなければ地域医療は崩壊しかねないし、そうなれば健やかな暮らしは望み得なくなってしまうからだ。

いま、日本の医療のために本当に必要なのは、10年後20年後を見据えた体制を築き上げることだ。少子化と高齢化の双方に対応し、下手すれば崩壊しかねない健康保険制度を立て直すことなどにより、「元気なニッポン」復活のシステムづくりに寄与するのである。そのためには日本のグランドデザインが必要だが、その遂行、実現には透明で公正な予算が不可欠になる。そういう意味で、「事業仕分け」は、国民による、国民のための医療体制構築のためのいい勉強の機会だったと受け止め、さらに前へ進んでいってほしい。

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