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国民健康保険には大手術が不可避

2009/08/03
医療ライター 須藤公明

所得格差や地域格差など様々な問題にどこまで配慮してのことかは不明だが、厚生労働省は「景気後退で保険料を軽減される低所得の加入者が増え、保険料収入の減少は避けられない」という判断から、2010年度に公費による国保への財政支援拡充を検討、「数千億円規模の財源を確保し、財政悪化を補う」考えだとされる。それは、国民の健康を維持するための緊急避難策として素直に評価したい。だが、一方で「この政策が、中長期的な財政再建を目指す骨太の方針を骨抜きにしかねない」という心配も頭を過ぎる。

話を「骨太の方針」に転じたのには、理由がある。それは国の在り方に関わる問題であり、その基盤である財政の健全性の維持は避けて通れないからだ。人生の場合、健康は現在の問題でもあるが、一生の問題でもある。毎年の健康診断や「治療から予防へ」というのは、その考えを基にしたものにほかならない。そして健康保険にしても火災保険にしても、保険というものは、中長期的な視野で、いざという時に備えるための支え合いの仕組みである。つまり、目先の損得で判断すべきものではない。

そこで、国保である。このままでは瀕死の状態から脱出することは不可能だろう。理由は、単純である。人生60年の時代の制度が、人生80年の時代に通用するはずがないからだ。これは年金も同様で、延長した20年間の負荷に耐え得る構造、仕組みにはなっていない。「長寿化のリスク」に対応できないことが明白になったのである。だから、今後も国民皆保険を続けようとするなら、各種健康保険制度の抜本的改正が不可避である。それが、税制の抜本的改正に連動することは、改めて言うまでもあるまい。

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