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国民健康保険には大手術が不可避

2009/08/03
医療ライター 須藤公明

「国民健康保険(国保)事業会計の基金が底をついた」といわれる。国保は市区町村ごとに運営される仕組みだが、ほぼ70%の自治体で赤字となれば、いまや瀕死の状態にあることは間違いない。原因はどこにあるのか。ひとつは、その抑制が政治的な問題にもなっている医療費の増大であり、これには後期高齢者医療制度なども関係している。もうひとつは、保険料の滞納であり、「現在、滞納率は20%を突破した」という話も聞く。5人に1人となれば見過ごせない比率であり、当然、収支に大きな影響を及ぼす。

だが、それ以上に深刻な問題に、国保に加入しなければならないにもかかわらず加入していない、いわゆる無保険者の増大がある。これには、格差社会などの影響もある。端的な例を挙げればフリーターであり、また世界同時不況による雇用調整の渦に巻き込まれ、職を失った人々である。離職したことによって、企業の健康保険組合(企業健保)や全国健康保険協会(協会けんぽ)からの離脱を余儀なくされたものの、生活費などを考え合わせ、国保への加入を見合わせている人々である。

だが、このような所得上の理由からではなく、金銭的な余力はあっても無保険者という一群が存在する。「病気になったことがないし、なる心配もないから」という我儘な理由もあれば、「他人の治療費を負担させられているようで、納得できない。万が一の場合は、保険会社の医療保険に加入しているから」という損得勘定による理由もある。これらの人々は、「国民皆保険」という制度を真っ向から否定していることになるわけで、それを放置しているのは、行政の怠慢にほかなるまい。

そういう人々に国保に加入するように説得すれば、「企業健保や協会けんぽとの違いが大きく、また国保だけに限って見ても、保険料に地域差があり不公平だ」という指摘をされるかもしれない。これは事実で、保険料が均等割りだけでなく、所得や資産を反映する仕組みの上、市区町村で料率に違いがあるためだ。ごく大雑把な言い方をすれば、財政に余裕のあるところの人々の負担は軽く、そうでないところの人々の負担は重い、ということになる。「最大で3.6倍の差」という調査結果も報告されている。

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