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地域医療の再生は可能か

2009/05/20
医療コラムニスト 須藤公明

 「格差社会」だといわれる。そこには所得をはじめ様々な側面がある。とりわけ見過ごせないのが、都市と地方の格差の問題だ。出張などの折に地方都市の寂れた姿を見るつけ、その深刻さに心が痛む。

 そして先日また重要な問題提起に出合った。銚子市長のリコール(解職請求)がきっかけである。新聞などでご存知の方が多いだろうが、対立の原因は医療問題にある。岡野俊昭市長が経営悪化や医師不足から銚子市立総合病院の診療休止を打ち出したところ、リコール運動が展開され、解任となったのだ。

 だが、銚子市立総合病院の問題は、氷山の一角にすぎない。似たり寄ったりの状況のところが、全国各地にある。厚生労働省がまとめた調査で、公的医療機関の数が減っているのが、それを端的に物語るものだろう。

「全国の自治体病院の累積欠損額は2兆円を超えた」という数字もあるし、「自治体病院の75%が赤字経営に陥っている」という指摘もある。分権をテコに「地方の時代」を喧伝する声も聞かれるが、医療の世界では自立どころか存続が脅かされる事態に陥っているともいえる。

 なぜ、自治体病院は立ち行かなくなったのか。その要因は、診療報酬制度の改定、臨床研修制度の変更など、いろいろある。前者は健康保険制度の問題に直結しているし、後者は医師の養成システムと大学病院の経営問題を抜きには考えられない。

 赤字体質や医師不足などの問題が縺れにもつれ、簡単には解きほぐせないのが実態なのだ。そのうえ自治体病院には、救急や小児科など不採算の分野も引き受けなければならないという宿命もある。さらに、公務員による素人経営を原因に挙げる向きもある。

 しかし、いかに問題が複雑で、原因が錯綜しているからといっても、地域医療を崩壊させるわけにはいない。いかに健康な人間でも、突然、医療を必要とする場面に遭遇する可能性がある。たとえば交通事故であり、地震で家屋の下敷きになった場合などだ。

 これまで、自治体病院は地域社会のセーフティーネットとしての役を担っており、それがために、ある程度の赤字が許容されてきたのも事実だろう。だがその仕組みは、少子高齢化や低成長経済によって、行き詰ってしまった。

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