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情報の偏在性~患者の主張を聞かないのが医師の仕事?~

2009/05/23
一般社団法人 統合医療福祉中村直行研究室 中村直行

 前回は、「情報の活用」をテーマとして皆さんとご一緒に考えてみました。その結果、精度の高い有益な医療情報がしっかり機能していないと、大きな問題に繋がりかねないことを確認しました。

 しかし、情報はユビキタスのごとく存在したり必要な時に存在しなかったりします。それが情報の宿命とも言えるのです。科学的根拠に基づく医療を実践する医療者が、非医療者である患者やご家族の声に耳を貸さなくなる場合もあるかもしれません。

 そこで、今回は、事例を通して、その実態を検証してみることにしましょう。

藁にもすがりたい患者やご家族の心理

 筆者は、2001年5月から2006年10月まで、特定非営利活動法人で様々な分野の専門医と共に、延べ700名を超える患者やご家族の医療相談を行いました。

 軽度のものから重篤なケースまで、さまざまな疾患と向かい合いましたが、最も多かったのが悪性腫瘍で、全体の7割以上を占めました。

 実例を紹介します。

相談者の質問

「平成12年末に京都の○○病院にて初期の虫垂がんと診断され手術しました。虫垂と大腸の一部およびリンパ節の一部を切除しました。術後は、「5FU」、「シスプラチン」、「TS-1」を投与してもらっていますが、発熱や嘔吐(おうと)などの副作用に悩んでいます。

 医師に再発の可能性のことや他の療法について相談しても「私が信用できないのなら他の病院に移ってもらっても構わないよ」とのことで、転院も考えています。

 知り合いの勧めで、リンパ球療法という免疫療法を希望して、今かかっている病院の医師に相談したのですが、きっぱり断られました。どこに行けば免疫療法を受けられるのか教えてください」

当方の回答

 「担当医から説明があったことと思いますが、虫垂がんは、大腸がんの一種で日本では症例が少なく特殊ながんといえます。一般的には、抗がん剤や放射線治療も効きにくいといわれています。

 しかし、個人差もありますし、化学療法や放射線療法によって治っておられる方もいらっしゃいますので、副作用は辛いでしょうが悲観することなくがんと向き合ってください。

 ただし、がん治療と向き合うためには担当医とのコミュニケーションが不可欠です。お話の向きから拝察しますと、信頼関係が十分に構築されていないように思われます。

 理由は測りかねますが、どうしても納得がいかないようでしたら、転院というのも選択肢の1つに成りえます。その際には、転院先のめどがついてからになさってください。

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