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情報の活用~何故、病院のタライ廻しが起きるのか~

2009/05/09
一般社団法人 統合医療福祉中村直行研究室 中村直行

その後、いくつかの大学附属病院、医療センターに連絡しましたが、いずれの病院もベッドが満床であるとか、他の患者の対応中で手が離せない等々の理由で受け入れを断ってきました。

前述の医師は、止むを得ず都立病院に再度連絡し、同病院は漸く受け入れに応じました。その結果、救急搬送された妊婦はCT検査後、意識不明のまま帝王切開により無事に男児を出産し、脳内出血による血腫の除去手術も受けることができました。

しかし、数日後、この妊婦は逝去されました。

あなたには、この事例がどう映りますか。患者やご家族と医療者や医療機関側が、同じ捉え方をする場合もあるでしょうし、全く意見が異なる場合もあるかもしれません。

「けしからん、何という対応の拙さだ」、「東京都は何をやっているんだ」、「厚生労働省は現場で何が起きているのか知っているのか」、「対岸の火事というレベルの話ではない」等々、色々な意見や批判が湧き出たのは記憶に新しいところです。

それぞれの立場で色々な意見や批判があったり、問題の本質にまで言及されることがあったりするのは言うまでもありませんが、問題の解決を図るということも大切なことです。

内在する問題

もし、前述の妊婦が同病院の産科ではなく救急に搬送されていたら、対応できる医師が当直していたら、新生児集中治療室(NICU)が満床でなかったなら等々、「たられば」の問題点が浮き彫りにされました。

問題点の対策が容易であったのなら既に解決されているはずで、このような問題は起きなかったという意見もあると思われます。筋論ではその意見を全て否定することはできませんし議論も平行線となるでしょう。医療機関や行政にも正当な言い分はあるのです。

しかし、飛躍し過ぎない範囲で私見を申し上げますと、精度の高い様々な医療情報がしっかり機能していなかったことも、大きな問題に繋がる結果となった重要なファクターの一つであることを再認識すべきだと考えます。

言い換えますと、問題は単純ではないにしても、いわゆる医療情報基盤が未整備であると共に、有効活用されていなかったことにも大いに起因していると言わざるを得ないということです。

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