インターネット上の情報は鵜呑みにできない
家庭医学書に収載されている情報量とインターネットで収集できる情報量とでは、比較にならないほど、インターネットにおける情報量の方が圧倒的に多いのはご存知の通りです。実際に、クルッケンベルグ腫瘍で検索すると、200を超える情報が発信されています。
しかし、執筆した責任者の名前が明記されている家庭医学書に対し、誰でも自由に発信することができるインターネット上の情報には、医療関係者だけでなく、非医療者である企業や個人のPRや感想も併存しているのです。
非医療者である企業や個人のPRや感想が、一概に悪いと決め付けるのは極論ですが、発信されている情報を鵜呑みにするのは、科学的根拠に基づく医療という視点でも、責任の所在という論点でもとても危険なことです。
何故ならば、発信されている情報の内容には、疾患の説明だけならともかく、治療法にも言及されている場合もあるからです。
「これでがんが治った」「死の淵から奇跡の生還を果たした体験者が語る真実」「学会で好評を得た」等々の文言を人からお聞きになられたり、メディア等でご覧になられたりしたことはありませんか。
これらの情報は、実際に真実を発信している場合もあるかもしれませんが、もし全てが事実であるならば、医療費の高騰に頭を悩ませている国家にとっても、日夜真剣に疾患に取り組んでいる医療者にとっても、不安を抱えておられる患者やご家族にとっても、こんなに有難い話はないのです。何故ノーベル賞がもらえないのでしょうか。
言うまでもなく、表示や成分に関する薬事法、健康増進法、食品衛生法、景品表示法、JAS法、特定商取引法等々による規制を強化したり、放送倫理規程等々で自主的に規制したりして、野放しになっていた状況が改善されてきているのも事実です。
しかし、モグラ叩きのように次から次へと発信されるインターネット上の情報を管理するというのは、現実的にはとても難しいと言わざるを得ません。