ストレスに関する様々な調査報告、どの調査からも最も上位に挙げられているのが“対人関係ストレス”です。人と人との関係性のなかで、時には相手が理解できなくなってしまったり、嫌悪感や苦手意識を抱いてしまうことも少なくありません。
私たちは、仕事をしていく上でも、日常生活の中でも、対人関係から生じるストレスから逃れることはできません。しかし、自らそのストレスを軽減していくことは可能です。
今回は、やさしい心理学を交えて対人関係におけるストレスへの緩和に役立てて頂く事を願ってお話させていただきます。
人を正確に理解することは可能なのでしょうか?
人を理解していくにあたって、果たしてどこまで正確に相手を把握しているのでしょうか? 私の講演では、ユニークなクイズを出して「人の認識の相違」についてお話しています。
1枚の若い男女が写っている写真を見せて「この2人の関係は次のうちどれでしょう?」と、3つの選択肢から1つだけ答えを選んで頂きます。さらに、その選んだ理由も聞くことにしています。
(1)恋人同士
(2)結婚2年目の夫婦
(3)全くの他人
会場では、興味深くその写真を観察し、様々な意見が飛び交います。講演の度に、毎回、試しているのですが、いつも必ず回答が分かれ、さらに面白いことに、同じ回答を選んだ方々であっても、その理由は異なっています。
<回答理由の一例>
(1)恋人同士を選んだ人の理由:「女性の笑顔から恋人同士だと感じた」「ふたりの距離と雰囲気から恋人同士と感じた」
(2)結婚2年目の夫婦を選んだ人の理由:「密接感が自然であり夫婦だと思った」「女性の安心している表情から夫婦だと感じた」
(3)全くの他人を選んだ理由:「笑顔はつくっているという感じがしたことから他人だと思った」「ふたりの雰囲気がなんとなくでき過ぎていて他人だろうと感じた」など
このように、まず、選んだ回答は3通りに分かれ、選んだ回答が同じであっても、その理由は人それぞれ異なっていました。
このクイズを通して、私が皆様にお伝えしていることは、同じ時に、同じ会場で、同じ写真を見ても、それぞれ、選択した回答が異なり、さらに、同じ回答を選んだ方々であっても、その理由は異なっているという事実から、人というものは、同じ状況であっても、ものの見方・とらえ方・感じ方は、それぞれ異なるものであり、そもそも、これが人間の認識であるということです。
会場の皆様には、この体験から、いかに人の認識とは不確かなものであり、感じ方にも相違があるということを理解していただきます。