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待ち時間が長すぎて、受診をあきらめてしまう主婦や会社員を救ってください。

2010/04/09
21世紀医療フォーラム取材班 ライター 狩生聖子

「時間がないのでまた来ます」と立ち去ろうとした患者に、
受付の女性は、「ちょっと待ってください」と……。

昨年末、地方自治体の健康診断で心電図に異常が見つかった。突然死の原因にもなる不整脈の「WPW症候群の波形が見られる」という。健診先の担当医師は「よく知っている」という総合病院の専門医に紹介状を書いてくれた。「脅かすわけじゃないけど、何かあったら困るから、ちゃんと行ってね」と言われ、年末の某日、なんとか時間をやりくりして朝の9時に病院に到着した。

ところが科の受付では、「今日は○○先生、予約もいっぱいですし、いまからの受診だとかなり待ちます。すべて終わるのは夕方になってしまいますが……」と、いわれてしまった。それは困る。仕事はオフにしてあるけれど、娘の通う幼稚園が閉園してしまう時間である。このことを説明し、「今日はけっこうです」と足早に去ろうとしたところ、「ちょっと待ってください」と引き止められた。

「まずは待合室にいてください。看護師が対応しますので」というので、ちょっとイライラしながらも待っていると早速、声をかけられた。診察室とは別の部屋に案内され、担当の看護師さんから、「何時くらいまでなら大丈夫ですか」と聞かれた。タイムリミット時間を告げると、「わかりました。じゃあ、今日は先に検査をやってしまいましょう。結果は別の日に聞きに来ていただくことでいいですか?そうすればお昼頃には終わりますよ」。

あとは手際のいい対応だった。症状をメモした彼女は診察室の医師にこれを届けに行った。まもなく私はその医師に呼ばれ、一通り診察を受け、検査へ回ることができた。主治医は嫌な顔一つせずに終始、ニコニコと丁寧に対応してくれた上、「次回の受診は子どもと一緒でも大丈夫だよ。連れておいでよ」。

ここでさきの看護師さんが再び診察室に入ってきた。「先生、もう1人、『時間がない』、といってきた患者さんがいて。やはり、お子さんを預けて来ているお母さんなんですが……」。

どうやら、この病院では患者の状況によって診察の内容や順番を考慮する体制が柔軟に整っているようだった。紹介患者であり、命に直結する病気かもしれない、という緊急性を考えてのことだろう。他の患者さんの待ち時間が長くなってしまうことは申し訳ないが、これは立派な対応だと思う。実際、受付の女性に引き止められなければ私は2度と受診しなかった可能性が高い。幸い深刻な異常は見つからなかったが、そうでなければ放置して突然死をしていた可能性だってある。

実際、そうした例は身近にけっこうあるのではないか。「不調を感じたけれどなかなか受診できなかった。慌てて病院にかかったときはもう手遅れだった」という話をよく聞くが、多忙というだけでなく、「病院に行っても待ち時間が長い」ということがある。私の親しい女友だちは、1年前に受けた健診の結果をいまだに聞きに行っていない。先日、取材先の病院ではサラリーマン風の中年男性が、受付で「そんなに待つんですか、じゃあ無理だ」と半ば怒りながら去っていく姿を見た。

待ち時間の問題は今に始まったことではない。働き盛りの世代が病院にかかれない実情もたびたび指摘されてきた。皆保険制度でかかりつけ医制度がなかなか広がらない現状で、当面、事態は変わらないだろう。しかし、せめて医療側にはこうした人たちを救う努力をしてほしい。私が経験したような例は難しいだろう。しかし、「長く待てないから」と帰ってしまいそうな人たちに対して、「今日はどのような症状で来たのですか」「○時頃ならすいています」「電話で混み具合を確認できます」「何か病気が見つかることもあるので、必ずまた来てください」などと声をかけてくれるだけでずいぶん違うはずだ。そして、現にこうして声をかけてくれる施設も意外にある。

ちょっとした一言で患者の気持ちは変わる。「待てよ。仕事より自分の体のほうが大切なんじゃないか?」と思い返す人も多いだろう。結果的に、働き盛りの多くの命を救うことにつながるのではないだろうか。

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