「検診目的なら検診専門の施設で受けてほしい。それで異常があったらうちに来てほしい」というのが病院側の本音であろう。
しかし、親友によれば、
「うちの地域には東京のようにたくさん医療機関がない。マンモグラフィーのある施設を探したらそこの病院くらいしかなかったの。ほかを探せといわれても、離れた場所にある大学病院くらい」という。
もう1つは医師の専門性の問題だ。「症状がないのに受診した患者」に対し例の医師が発した言葉は「忙しい診療」でイライラしていたことを差し引いても、近年の「乳がん事情」から逸脱した答弁といえるだろう。
そこで早速、友人から聞いたその医師のプロフィールを調べてみたところ、乳腺の専門医ではなく、消化器外科の専門医であることが判明した。日本の乳がん患者の罹患率はかつてとても少なかったから、もともと乳腺の専門医は少ない。激増する乳がんの数には数がとても追いつかないという現状は医療関係の仕事をしている者なら誰でも知っている。地方の病院では独立した乳腺外科のある外来は少なく、外科の中で乳がんも診ることがめずらしくない。特に地方はそうだ。
しかし、今後はこうした外科にも乳がんを疑ってやってくる女性患者がますます増えるはずだ。そうした中には早期発見で命を救われる患者もいるだろう。
「専門医でないから」といって、あんな発言は許されない。早期乳がんの発見に多くの専門家が奔走し、検診を啓もうしている中では不適切である。
婦人科ほどではないが、乳房の検査もまた、女性にとっては勇気がいるものだ。まずは、「よくきましたね」くらいの言葉がほしい。
目の前の患者にちょっとよりそう気持ちがもてたら、自然に口から出てくる言葉ではないのか?(検診を他の場所で受けてほしければ、異常なし、という結果が出た後に~次回からはここに行きなさい~と説明すればいいことだ)
40代以降の女性には「1年に一回の乳がん検診」がすすめられている。私たち患者もこれをふまえ、自分の努力と責任でよい検診先をみつけることが必要だろう。