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安易に掲げるべきではない「標榜科」 

2009/08/07
21世紀医療フォーラム取材班 ライター 狩生聖

痛みがひどいのに治療も投薬もされずに帰される。
2軒目の専門医でようやく解決

 この話だけを聞くと、「専門性の違い。重い症状の場合はやはり、専門の先生に診てもらうのがよいのだなあ」ということですんでしまったかもしれない。しかし、後からとんでもない事実が判明したのだ。

 1軒目のクリニックの医師には皮膚科の知識が全くないことが関係者の聞き込みによって判明したのだ。詳細は明らかにできないが、「とりあえず、皮膚科を入れてみました」ということらしいのだ。

 日本では医師になると、医療法で定められた診療科であれば何を標榜して開業してもよいことになっている。いわゆる「自由標榜制」だ。

 患者側からは、医師の専門性がわかりにくいという意見もあるが、多くの医師は自分の力量から標榜科を決めており、診療のできない分野を標榜することはないのも事実である。

 だからこそ、一部の医師が安易に専門外の標榜科を掲げるのには納得ができない。「標榜科は専門性の高いものから並べるのが基本。3番目に並んでいる標榜科がその医師の得意分野じゃないことはすぐにわかる」という指摘もあるだろう。

 でもこうした判断ができるのは医療にある程度、詳しい人である。一般の人の多くは、標榜されている科ならそれが何番目に位置していようと、標準的な診察・治療を受けることができると信じている。

 コーヒー店などでサイドメニューとして置かれているパンが、ベーカリーのそれと比べ、味が劣るのは仕方がない。でも、お腹がすいているから食べる。食べておいしくなければ次からは食べなければよいだけのことだ。

 でも、医療機関ではそうはいかない。適切な診断、治療を受けられなかったとしても患者にはそれが正しいか、間違っているかわからないことも多い。以前見たNHKの医療番組では、専門外の医師によるうつ病治療で症状が悪化してしまった患者さんのケースが紹介されていた。

 医療といっても経営が成り立たないと大変であるし、「患者が集まる」という理由で標榜科を選ぶ医師が決して悪いとは思わない。ただ、できないものを「できます」と標榜することはやめてほしいということだ。

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