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笑わない婦人科医、その理由は?

2009/07/27
21世紀医療フォーラム取材班 ライター 狩生聖子

「デリケートな部分を診るのだからこそ、不用意に笑顔を見せるべきではない」という医師のポリシー。しかし、患者の受け止め方はそれぞれ。

 しかし後日、私はそんな院長の態度の背景に、意外な理由があることを知った。クリニックに忘れ物を取りにいったときのことだ。

 診療時間より早く着き、ドアの前で待っている私は、スタッフの女性とまだやってこない院長の話になった。

「昨日も初診の患者さんが集中し、夜の10時頃まで診察していた」という。スタッフによれば院長は非常に真面目な人物で、「大学病院では1人1人の患者さんをきちんと見ることができない」という理由からクリニックを開いたのだという。

 開業以来、休みはほとんどなく、休日も残った仕事のために病院に来る日々が続いているそうだ。そしてスタッフはこう話した。

「先生は、普段はとても楽しくて、明るい人なんですよ」
「えーっ?」私は声をあげてしまった。そんな反応を予想していたように彼女はこういった。

「やっぱり、信じられないですよね。でも、患者さんに対しては絶対、そういう部分は見せません。婦人科はデリケートな部分を診ることもあって、患者さんに意識されないように気を使っているのだと言っています。診療中は絶対に笑わない、と決めています」。

 病名が確定する、あるいは検査の結果が出るまでは「余計なことはいわない主義なのだ」とも聞いた。結果がまだ出ないのに主治医の一言で患者が一喜一憂するのはあまりよろしくない、という考えのようだ。

 私はそれを聞いて「なるほど」と思った。「硬い表情で決して笑わない」というあの姿勢は院長のポリシーからきていたのだ。「私の感覚には合わないけれど、先生もよかれと思ってやっていること。それならそれでよい」と納得した。

 その後、私は同じ検査を別の施設でもう1度、受ける機会があった。大学病院の婦人科で、検査を担当した医師は、先の院長と180度異なり、とにかく、よくしゃべる。子宮がんの原因や危険性についても最新の情報を詳しく教えてくれた。

 検査結果の予測もしてくれて、「診た感じではおそらく問題がないでしょう」とのことだった。 その分野の専門家だからこその対応だ。私はそうした意味で「すごい先生だな。私の理想とする名医かも!」と感動して診察室を出た。

 ところが待合室でほかの患者たちと話してみると、意外にその医師の評判はよろしくない。医師のいうことが理解できないと怒られるという。「態度が横柄」という声も多かった。

 名医も人それぞれというけれど、本当だと実感した。当然、最初にみてもらった「笑わない医師」に「愛着」を持っている患者はけっこういるのかもしれないと思いなおしたのだった。

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