日経メディカルのロゴ画像

江戸の看護書・『病家須知』(2)

2009/04/25
医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班ライター 油井富雄

巻1の構成は、以下の6章からなる。

  • 養生の心得
  • むやみに薬を用いないこと
  • 医師を選ぶ際の心得
  • 医師に診察を受ける時の心得
  • 病気が伝染する理由
  • 看病人の心得

すでに華岡青洲の世界初の麻酔剤を使った乳がんの外科手術も行われ、長崎の出島経由でオランダ医学も日本に入ってきていた。しかし庶民のほとんどが接する医師は、中国から伝来し日本流に発展した草根木皮や鉱物などの生薬(しょうやく)を使う医学だった。漢方という言葉は、江戸末期、オランダ医学の蘭医学などと対比して生まれた言葉だ。

迷ったら服薬はするな。薬は最後の手段

むやみに薬を用いない――では、「何人かの医師に診せて、その意見が異なって本人も家族も迷いの大きい時には、服薬を見合わせ病気の成り行きを見る方がはるかに優れている。占いやくじで決めるのはもってのほか」と厳しく戒めている。

さらに、「熱や膿が出るなどは体が毒素を狩り出し体外に排出する作用で、自然治癒作用のなすところとなれば、医はその足らざる力をたすけ、病毒に対して対抗する元気が負けないようにするために薬石や鍼灸を用いる」とある。

たとえば、風邪などで少しぐらいの熱を出たからといって解熱剤などを服用すると、かえって風邪が長引くことは最近医学的にも確認されてきた。ウイルスは熱に弱く、発熱が抗ウイルス作用として働いているのだ。これを江戸時代に素朴な言葉記してあるのは驚くべきことでもある。

現在の薬の発展は、著しいものがあるが、あまりに便利な薬がある現代だけに、頭に入れておきたいものだ。

良い医者が少ないことは災難、情けないこと……。

医師を選ぶ際の心得――については、「医療はどんなに学んでも効果は簡単には得られない難しい仕事、良医をあらかじめ知っておくことが必要」という。最後には、「太平のこの世に良医が少ないことは災難であり、情けないことだ」と言っている。

『病家須知』は、看護書ではあるが“良い医者、良い医療”や“賢い患者学”の指南書でもある。 次回は、著者の平野が序文で記した江戸時代の医師の欠点や良い医者の見分け方を読んでみよう。

  • 1
  • 2
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ