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健康幻想が生む一億総“半健康”時代(1)
「血圧自動測定器がもたらす不安について」

2009/03/07
医療コラムニスト 21世紀医療フォーラム取材班シニアライター 田野井真緒

血圧は夜低くなって昼間高くなる

 血圧は心臓が血液を送りだすときの血管壁にかかる圧力である。心臓は一日に10万回も拍動し、そのたびに血液を送りだしているから、一日中血圧を測定すれば10万個の血圧が測定でき、一日の間では数十mmHgも変動する。24時間測定し続けてその平均値をとると、血圧は夜低くなって昼間高くなるのが普通である。また、運動直後や刺激的なテレビ番組をみて興奮すれば高くなる。

 だから、あなたが速足で市役所まで歩き、すぐに血圧自動測定器の前にすわれば血圧値は高めにでる可能性がある。そういう不確定要素を排除するために、診察室では安静にした状態で、しかも日を変えて3回測定してから高血圧かどうかを診断している。それにしてもたった数回の血圧を測っているに過ぎない。

 高血圧の治療を受けている人以外に、こういうことはあまり知られていない。にもかかわらず自動血圧測定器だけが置いてあるのは、いたずらに健康な人を不安にするだけである。血圧自動測定器を置くなら血圧がどういうものかをきちんと説明するパンフレットを添えるべきだろう。

 正常値と異常値が1人歩きすれば健康に不安を抱く人も多くなり、一億総“半健康”状態ともいうべき日本人の健康観が生まれてしまう。

 私たちはもっと自分の健康な感じ、健康感を信じるべきではないのか。身体感覚として体の不調を感じる前から「病気かもしれない」と不安だけを先走りさせる必要はないのだ。

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